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『世界を席巻するイスラム金融』を読んで

イスラム金融について関心を持ち、去年の秋から3度ほど記事にしてきた。
当初は情報が少なく、学術論文を読んだりして記事を書いた。
ネットで「スクーク」で検索すると私の記事が上位に来たりして、責任の重さを感じたりもした。
それが最近は、新聞などでイスラム金融が話題になることも増えつつある。

例えば日本経済新聞の経済教室欄に「ゼミナール」というシリーズがある。
12月4日(火)より、「イスラム金融の基礎」と題し、連載が始まっている。
(国際協力銀行金融業務部の吉田悦章調査役が執筆)

いささか古い記事だが、8月20日付け日本経済新聞ひと・ピープル欄では、「イスラム金融呼ぶ“小泉流”」と題している。
小泉元首相の秘書官だった飯島勲氏を中心とした人脈が「外交の裏側で地下水脈をつなぐ」のだという話。

私は8月3日に『イスラム債(スクーク)発行倍増 しかし・・・』という記事を書いた。
http://blog.so-net.ne.jp/jpdragon/2007-08-03-1
FACTAの記事は間違いではないかもしれないが、やはり読みが甘いのではと思った。

ロイター通信によると、国際協力銀行は2008年5月までにイスラム債を発行する計画らしい。
エネルギー・天然資源部門の幹部がドーハで行われた会議の合間に明らかにしたという。
同幹部によると、「マレーシア市場もしくは海外で発行の可能性を探っている」とのこと。

『世界を席巻するイスラム金融』という本がつい先日、発売された。
著者は国際通貨研究所の糠谷英輝氏。 (発行はかんき出版/定価1,680円)
非常に簡潔に、また、重要事項を要領よくまとめてあると思う。

私がなぜイスラム金融に関心を持つのか、過去記事を読んでもらえばおわかりになれると思う。

「戦争はやめよう」と訴えることは必要である。
戦争をなくし平和を実現しようと訴えることに理由はなくてもいい。
しかし政治や社会問題の解決を考えるとき、経済や金融の知識はどうしても必要となる。
戦争をなくし平和を実現するには、経済や金融について考える必要がある。

著者は日本におけるイスラム金融の可能性として次の4つを挙げている。

①海外で日本企業がイスラム金融を利用するケース
②中東諸国のプロジェクト・ファイナンスなどで邦銀がイスラム金融に参加するケース
③イスラム資金の対日投資
④日本の投資家によるイスラム金融投資

この中で私が関心を持つのは③である。
原油高で膨れ上がったオイルマネーを日本市場に取り込み活性化させる。
豚肉加工会社などは参加できないが、それはやむをえまい。

ドバイ原油東京スポットは11月21日に90.30ドルという過去最高値を記録。
その後、反落しているが、過去に比して怖ろしく高値で推移していることは間違いない。
(本に書いてあり驚いたのだが、1999年のドバイスポットは17.08ドルだったらしい)

しかし、私が本当に期待しているのは上の4つのどれでもない。
日本はアジアへと流れを変えるオイルマネーの受け皿とならねばならない。
メガ・イスラム銀行を設立し、積極的にイスラム金融を運営しなければならない。

現在のところ、ヨーロッパではロンドン市場、アジアにおいてはシンガポール市場がイスラム金融の運営に積極的である。
また、アジアにおいては香港が追随すべく整備を進めている。

今年5月、デベロップメント・バンク・オブ・シンガポール(DBS)は初のイスラム銀行(イスラミック・バンク・オブ・アジア/IBA)を設立した。
IBAはDBSが6割出資だが、残りはGCC(湾岸協力会議)諸国の投資家による出資である。

日本の国際協力銀行ではシンガポールのやり方を研究しているものと思われる。
石橋を叩いて渡ることに異論はないが、叩いてばかりで渡らないのはいかがなものか。
考えるのは行動しながらでも遅くないと思う。


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コメント 2

どばし

こんにちは。
イスラム金融に関するコメント、拝見させて頂きました。かなり深い洞察ですね。
さて、文中で書籍を紹介されていますが、私にとってはその「ゼミナール」を執筆されている方がお書きになった「イスラム金融入門」の方が分かりやすかったですし、何より面白かったです。ご参考までにお伝えしておきます。
おやすみなさい。
by どばし (2007-12-16 23:57) 

リス太郎

どばしさんへ
イスラム金融に関する書籍は今年9月ごろから相次いで出版されてますね。ご指摘の『イスラム金融入門』は東洋経済新報社から出されたもの。是非読んでみようと思います。有難うございました。
by リス太郎 (2007-12-24 15:50) 

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