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日中関係の今後を占う2008年

1月5日発行の新華時報によると、福田首相の伝記が中国で出版されたらしい。
中国人の著者による『福田康夫傳』は、首相の年末の訪中にあわせて刊行された。
「福田首相は中国の状況をよく知る日本の“知華派”の代表人物」と持ち上げている。
日本との関係を修復したい中国にとって、安倍から福田への政権交代は渡りに舟だった。
日中友好ムードに水をさすことなく、どう国益に結び付けていくか、福田外交に注目したい。

福田首相の父親である福田赳夫氏は日中平和友好条約(1978年)締結時の首相である。
著者は福田赳夫氏を「両国友好交流のため堅実な基礎を築いた」人として称賛している。
記事の文面から読み取れる本書の具体的内容はこれだけだが、意図して好意的に書かれていることがわかる。

年末の福田首相の訪中は中国でも大きく報じられたようだ。
また、日本でも報じられたとおり、福田首相は今回の訪中で異例の歓待を受けた。
帰り際に山東省曲阜の孔子廟を訪れたことも、中国の人たちに好印象だったんじゃないかと推測する。

中国の民衆に「福田首相は立派な方」と思ってもらい、戦略的互恵関係を加速したいのが中国の思惑。
それができるのも、福田首相が就任時に「靖国神社には参拝しない」と明言しているからであり、これが覆されるとかなりまずい。
中国政府首脳は国民に対して面子が立たなくなってしまう。

          ■

同じ新華時報より違う記事を紹介。
在日中国人監督による映画『靖国神社』をめぐる日本での賛否両論の話。

在日中国人の李櫻監督が制作した『靖国神社』という映画の上映宣伝が始まっているらしい。
今年4月12日より、東京、大阪、横浜で同時上映されるとのこと。
この映画をめぐり日本の世論に激震が走っているんだとか。

右翼団体は「反日映画」と攻撃し、一部の映画人や文化人は映画の支援団体を組織して対抗している。
新華時報の記事によると、12月13日発行の週刊新潮では、この映画は「靖国刀と百人斬り競争、天皇と戦争の歴史の映像、および皇軍刀で中国人を斬っている写真などを組み合わせており、強烈で露骨な反日映画」であると批判している。

私は週刊新潮を読んでいないし、映画も観ていないので何とも言えない。
しかしこの新華時報の記事の続きを読んでかなりあきれた。

「週刊新潮はさらに、この映画に資金援助した文部科学省管轄の日本芸術文化振興基金を批判している。基金会が国民の税金でこのような映画に資金援助するのは容認しがたく、制作者に援助金を返還するよう要求すべきとしている」

映画『靖国神社』には、日本芸術文化振興基金、韓国東盛アジア基金、米国コダック映画基金が資金援助している。

1年ほど前だったか、やはり在日華人向け新聞で読んだニュースを思い出した。
中国政府が中国の若手映画監督に資金援助するという計画。
候補には国際的に評価の高い新進気鋭の若手監督が名を連ねていた。
実にもったいない話で、いたく残念に思ったのを覚えている。

国からお金をもらった監督は表現活動が大幅に制限されるだろう。
中国で為政者の喜ばない映画を撮るのはかなり勇気がいる。
残念ながら今の中国はまだそういったレベルの社会である。

週刊新潮の論調を間接的に読んで、そんなニュースを連想した。

「靖国神社を批判的に描いた映画はけしからん」という意見があってもいいような気がする。
しかし、「国民の税金で援助するのはけしからん」という意見はどうだろう。
お気づきのとおり、このふたつの意見は論点が全く違う。
後者はジャーナリストにあるまじき考え違いであると言わざるをえない。

新華時報では土本典昭氏や田原総一郎氏のコメントを掲載し、賛成意見も多いことを報じている。
また、日本芸術文化振興基金の見解について、次のように紹介している。

「ドキュメンタリーには強烈な社会性と政治性がつきものである。『靖国神社』については、我々も激しい討論を行ってきた。しかし評議委員会は最終的にこの映画に資金援助することを決定した。映画の完成後、確認を経て、映画と元々の企画書に大きな差異はないと認めている。なので我々は、監督の作家性と創作権を尊重すべきであり、たとえ異議があろうとも、むやみに干渉したり強制的に修正を求めたりすることはできない」

          ■

同じく新華時報の記事より。
ロシアのビジネス紙の記事を中国語に翻訳して紹介している。

「中国人と日本人はどうしても理解しあえない」と題されている。
何の話かと記事を読むと、去年12月初めに北京で行われた日中経済対話の話。
日本が中国に促した、人民元為替レート引き上げ努力とエネルギー憲章条約加盟について、中国側がプレスコミュニケに書かなかったという例の話。

あのニュースは新聞で読んだが、大して興味が持てず、すぐに忘れていた。
プレスコミュニケの内容を勝手に変更するのは異例なことだが、それに対する日本の過剰反応も異例だった。
「知華派」の福田首相ならわかると思うが、中国がそういった行動をとるのは珍しいことではなく、瑣末なことにまでいちいち大げさに抗議する必要はない。
今年はもっと強弱をつけた大人の駆け引きを期待したい。

日本の抗議が報道されたあと、どうなったのか知らなかった。
何らかの報道がされていたと思うが、すっかり忘れており気がつかなかった。
ロシアのプレスは中国側の見解を紹介している。
中国はプレスコミュニケを「共同声明」とは考えていないらしい。
「だから違いがあっても理解できる」と述べている。
もちろんこれは言い訳でしかないが、いちいち真に受けて相手にする必要はない。

日本と中国は桂小五郎と西郷隆盛に似ている。
相手は釣鐘である。
大きく叩くタイミングを外さないことだ。


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