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国籍法の改正に賛成できない人たち

国籍法改正案をめぐる議論がブログ上で活発化している・・・らしい。
「国籍法」がキーワードランキングで2位を倍以上引き離す首位となった。
(11月19-25日ソネットエンタテイメント調べ)
12月4日付け日本経済新聞夕刊には次のようにある。
「偽装認知に悪用される可能性があるのでは」という法案に対する反対意見が目立ち、メールやファックスで抗議を国会議員に送るよう呼びかける声もある・・・

12月5日、改正国籍法が成立した。
法律婚でない日本人父をもつ子どもたちに、生後認知による日本国籍取得が可能となる。
流れを変えたのは最高裁の判決だった。

今年(2008年)6月4日、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎長官)は法制史に残る判決を下した。
フィリピン人女性の子どもたち10人全員に日本国籍を認めたのである。
15人の裁判官のうち裁判長を含む12人が国籍法3条1項を憲法違反と判断した。
(12人のうち3人は他の9人と考え方が違う。立法の不作為を理由とする。3人のうち2人は立法不作為を違憲としながらも規定自体は合憲とし国籍取得に反対している)

違憲判決の根拠は大きく次の3つ。
①諸外国が婚外子に対する法的な差別を解消している
②日本が批准した国際人権規約および子どもの権利条約の規定
③日本と同様の規定をもつ多くの国が法改正している

ポイントは「婚外子に対する差別を許していいのか」ということ。
親が結婚しているかしていないかで差別的扱いをするのは憲法14条に違反している。
同じ理由で民法900条4項但し書き(婚外子相続差別)も違憲だと思う。

裁判で勝訴したAさんとBさんら9人。(計10人)
法律婚でない父親といっても、AさんとBさんでは事情が違う。

Aさんの場合、日本人の父親が既婚のためフィリピン人の母親とは事実婚。
父親はAさんが生まれて2年後に認知したが、国籍は認められなかった。
のちに弟が生まれ、胎児認知したため弟は日本国籍を取得した。(胎児認知の場合、改正前の法律でも国籍を取得できる)

Bさんの場合、日本人の父親はフィリピン人の母親が妊娠後に逃亡。
母親は認知を求める裁判を起こし勝訴したが、Bさんの国籍は認められなかった。

最高裁の判決が下されるまで、東京地裁と東京高裁の判断は対立していた。
国籍法の違憲を主張する地裁に対し、高裁は棄却を繰り返した。

最高裁判決要旨には以下のようにある。
「日本国籍の取得は基本的人権の保障を受ける上で重要な意味を持つことから、この差別で受ける不利益は看過しがたく、立法目的との関連性も見いだし難い」

冒頭で述べたように偽装認知を危惧する意見がある。
偽装結婚が当たり前のこの国で、偽装認知がまかり通る可能性は否定できない。
改正法では罰則規定が設けられた。(1年以下の懲役または20万円以下の罰金)

しかし、日本で就労するために日本国籍がほしいのであれば、偽装認知は現実的な手段だろうか。
外国に住みながら日本国籍を取得し、働ける年齢になってから日本へ来るのだろうか。
それともヒゲ面の兄ちゃん連れたおかんが、そのへんのおっさん指差して、「この子の親父はこいつです」と言うのだろうか。

外国人労働者を合法化すれば、偽装認知を心配する必要はほとんどないかもしれない。
それはともかく、今、大事なことは、当然の権利を行使できない人たちを一日も早く救済することである。
偽装認知の可能性は法改正に反対する理由にならない。

不当な差別を許してでも防ぐべき不正とはなんだろうか。

日本で生活する以上、日本国籍がないと自由が大幅に制限される。
少なくとも日本で生まれ育った人には、希望があれば日本国籍を認めるべきである。
また、ルーツの国の国籍をもつ人も、等しく権利を享有できる社会であるべきである。

偽装認知を理由に国籍法改正に反対する人たちは、改正に賛成したくない他の理由があるように思われる。
日本国籍を保有しているということを、何か特別なこと、つまり特権のように思っているのかもしれない。

          ■

2002年 最高裁小法廷
裁判官5人中2人が国籍法3条の規定は憲法14条に反する疑いが強いとの補足意見

2005年4月13日 東京地裁
Aさんの国籍を認め国籍法を憲法違反とする初めての判決
ただし家族としての共同生活が認められない場合には国籍取得を認めなくても違法と断ずる根拠はないと条件付き

国は判決を不服とし控訴

2006年2月28日 東京高裁
一審判決の取り消し Aさんの請求を棄却

2006年3月29日 東京地裁
Bさんを含む9人全員の日本国籍を認める判決
婚外子を差別している国籍法3条そのものが違憲であると判断

国は不服として控訴

2007年2月27日 東京高裁
一審判決を取り消し Bさんらの請求を棄却

AさんとBさんら9人(計10人)上告

2008年6月4日 最高裁大法廷
10人全員に日本国籍を認める

2008年11月18日 国籍法改正案 衆院本会議可決

2008年12月5日 参院本会議可決 改正国籍法成立 (2009年1月1日施行)

【参考文献】
『法に退けられる子どもたち』 岩波ブックレットNo.742 他

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