SSブログ

『〈研修生〉という名の奴隷労働』(発行・花伝社) [外国人労働者問題]

『〈研修生〉という名の奴隷労働』という本が発売されている。
出張先の書店で買い、帰りの新幹線で読んだ。
2008年6月22日に熊本学園大学で行われた「外国人労働者問題シンポジウム」の内容を中心に構成されており、外国人研修・技能実習制度の問題点を最新の事例・状況を踏まえて論じられている。

派遣労働者などワーキングプアの問題が社会的関心を集めている。
外国人研修・技能実習制度をめぐる問題も根っこは同じである。
しかし日本人の若者が直面する問題ほどにはメディアも取り上げず、制度があることも知らない人が多い。

パスポートや預金通帳の没収、賃金未払いや強制労働、暴行・監禁・強姦など、違法行為が蔓延している。
送出し機関と第一次受入れ機関、JITCO(国際研修協力機構・5省共管の天下り機関)などの利権がはびこり、研修生・実習生を食いものにしている。

制度の見直し論は2007年に活発化した。
2007年末には入管指針が改訂されたが、抜本的な改革はなされなかった。
その後、政権が長続きしない混迷の中、いわばほったらかし状態にある。

政治家は有権者の多数から要求のあることにしか関心を示さない。
人権侵害があっても、被害者の立場が弱ければ重大とは感じない。
すぐに手を打つべき問題を後回しにしている。

JITCOを解体する気もないらしい。
この制度で甘い汁を吸う官僚や政治家などは、被害者の人権より自分らの利権が大事。
問題解決能力ゼロの現政権には何も期待できない。

一般国民の無関心とは裏腹に、この問題は経済界で注目されている。
制度が廃止されると困る中小・零細企業が多い。
「俺たちの人権はどうなるんだ」という経営者が多いが、彼らの主張をわかりやすく言えばこうである。
「最低賃金以下でこき使える労働者がいなければ私たちは生き残れないのです」。
奴隷制を肯定できるあなたの言う権利とは何か。

もちろん日本の産業の構造的な問題もある。
大企業による搾取により下請け企業は疲弊している。
大企業は下請けに研修生を安く使うことを強制する。
加害者は受入れ企業だけではない。

「自分たちはルールを守って受け入れているのに」と言う経営者もいる。
研修生の側にも、「最低賃金以下でもいいから働きたい」という人もいるだろう。

しかし今すぐ研修生の新規受入れ(団体監理型)は凍結すべきである。
これ以上、被害者を増やすことは許されない。
人身売買のブローカーによる搾取を一切排除し、研修生も実習生も労働者として保護される制度ができるまでは再開すべきでない。

新制度では「研修」や「実習」といった建前の名称はいらない。
「期間労働者」として受け入れたほうが実体に即している。
研修生や実習生は企業単独型に限定し、労働力確保の手段としては認めないことである。

          ■

『〈研修生〉という名の奴隷労働』
外国人労働者問題とこれからの日本
定価 1,575円   発行 花伝社

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0