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第14回歴懇芸能部落語会にて 『時うどん』あれこれ [大衆芸能]

昨日3月14日、雑司ヶ谷・割烹大倉にて、恒例の歴懇芸能部落語会がありました。
第14回目となった今回は、「天下ごめんの落語会」と銘打ち、全国津々浦々から集めた麺類が集合。
私は前座で『時うどん』という演目をやらせていただきました。

『時そば』は全国的に有名ですが、『時うどん』というと、「そばの間違いじゃないの?」と言われかねません。
落語を紹介する本でも『時そば』を紹介する項に、「上方では『時うどん』という」などと書いてたりします。
間違いではないのですが、江戸落語の『時そば』は、明治期に三代目柳家小さんが上方の『時うどん』を東京に移植したもの。

三代目小さんは大阪の落語を積極的に取り入れた人で、私が去年の秋にやった『青菜』もこの人が東京へ持ってきています。
また、明治の文豪・夏目漱石が三代目の大ファンだったようで、小説『三四郎』の中で、その芸を絶賛しているそうです。(読んでないけど)

ところでこの『時うどん』と『時そば』ですが、噺の展開の仕方がかなり違う。
先ほど「三代目小さんは大阪の落語を積極的に取り入れた」と書きましたが、単にそのまま取り入れたのではなく、東京の落語ファンに喜ばれるよう作り直しています。
大阪の演り方をそのまま東京で演ると、くどいというか泥臭いというかやかましいというか・・・。

東京と大阪、どっちがいいとか悪いとか、落語通を自称する人の一部にはすぐそういったことを言う人が多いのですが、それぞれの文化を理解すれば違いを楽しめます。
私は思い切りくどく泥臭くやかましく演りましたが、それは上方落語の大きな特徴です。
東京の『時そば』にはまた違った面白さがあり、どちらも楽しんでほしいです。
(故・五代目小さんの『時そば』は絶品。小学館からCDマガジンが発売中です)

『時そば』ではそば代をごまかす男を物陰から見ていた男が真似して失敗する。
『時うどん』では最初にうどんを食いに行くのは清八と喜六の二人連れ。
清八のやり口を真似しようと翌日ひとりでうどんを食いに行く喜六。
「ゆんべとおんなじようにやる」というアホ特有の習性がうどん屋との漫才のようなやりとりへと発展する。

『時うどん』を演ろうと思ったきっかけは、正月明けに大阪へ出張した時。
成人の日を完全にオフにして天満天神繁昌亭へ行きました。
そのとき一番面白かったのが桂坊枝師匠が演じた『時うどん』。
喜六が最後の一本を食べるとき、宙に投げて口で受け止める演出は坊枝師匠の演り方を真似しました。

紀伊國屋書店新宿本店の2階にあるレコード屋で笑福亭福笑師匠のDVDを買いました。
ここは落語のCD・DVDがほぼ完璧に揃います。

DVDの普及で落語の稽古が楽になりました。
昔(学生の頃)は仕草を研究するのにプロの落語会や他大学の寄席に出掛けたりしたのですが。

福笑師匠は高校生の頃、神戸元町の恋雅亭で『キタの旅』という新作を聴いて以来の大ファンで、家でDVDを見ながら腹を抱えて笑い転げてしまい、巻き戻してもう一回見ました。(DVDは巻き戻さんか)

「うどんを半分くれ」と袂を引っ張る喜六を清八が逆襲する場面。
福笑師匠の演出は斬新で、うどんをすすりながら箸で喜六をつついて格闘する。
これは面白いというんですぐ取り入れました。
昨日も一番笑いが大きかった場面で、有難いことに拍手までいただきました。

家に枝雀師匠のテープがあったので聴いてみました。
枝雀師匠の演出も独創的です。
喜六が一人芝居をする場面で大爆笑が起きているんですが、テープからはうめき声しか聞こえない。
体をくねらせながらイヤイヤをして逃げようとする場面を想像し、これも取り入れました。
ただ、私は落語を覚えるとき、出来るだけ枝雀は聴かないようにしています。(口調がうつってしまうので)

実はこの噺、大学の落研に入って最初に覚えたネタです。
もう20年以上も前の話で、当時のネタ帳も残っていません。
新ネタを下ろすときと同様、壊しては組み立てる繰り返し。
ただ、やってるうちに昔の記憶が蘇り、勝手に口をついて出たのには驚きました。

清八から「暑けりゃ肌ぬげ」と言われたうどん屋が切り返す場面。
「お客さん、お若いのに古いことを。弘法大師さんが頭に髷を結うてなはった時分の言い草でっせ」。

弘法大師といえば頭つるつるの恰幅のいい絵が思い浮かぶのですが、その「お大師さん」(うちの四国の祖母は弘法大師のことをこう呼んでます)が「髷を結ってた時分」というのは味のあるセリフ。
笑いは期待できませんが是非使いたいと思い取り入れました。(確か仁鶴師匠だと思うのですがテープが手に入りませんでした)

今回、落語を覚え始めたのは2週間前。
ちゃんと座ってやる通し稽古は最低60回必要と思っています。
経験上、2回以上壊して立て直すのに60回は必要なんです。

でも今回は50回ぐらいしか出来なかった。
歩きながらや寝ながらやるネタ繰りも不十分。
でも、お客さんが盛り上げてくれたので助かりました。

昨日の晩から次回は何を演ろうか考えてます。
前にも書いたような気がしますが、落語会が終わって次を考える時が一番幸せです。

さて、このブログを書き終えたら受験生に戻ろう。
と思ったら今日の笑点はますだおかだだし、7時から探偵ナイトスクープが見れるし・・・。

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コメント 4

ゆゆ

落語会上手くいったようでよかったね。
久しぶりのブログの更新に思わず「ひゃ~珍しい!」とわけわかんない言葉が口をついてでちゃったw
色々やることがあって充実しているようですね。
よかったよかった。
by ゆゆ (2009-03-15 23:06) 

リス太郎

ゆゆちゃんへ
すっかり暖かくなったね。春分の今日は少し肌寒かったけどね。明日から名古屋出張なんだけどコートなくても平気かな?
もうちょっとしたら上野の桜が咲き始めるで。見に来いよ。
by リス太郎 (2009-03-20 22:43) 

小笠原です。

時うどんは春蝶のを思い出します。
あくは強いが臭くない。
そういう感じでした。六代目はうろんでしたね。
by 小笠原です。 (2009-04-07 20:54) 

リス太郎

小笠原さんへ
春蝶の時うどんは聞いた記憶がないですね・・・
早く亡くなりましたが、今、息子さんが頑張ってます。おもろい。
六代目、最近、なぜかあの人の落語がなつかしい・・・
私が落語を聴きだしたころは、もうかなり呂律がまわらなくなってたけど。
by リス太郎 (2009-05-02 14:17) 

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