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『手水廻し』あれこれ 第15回扇好亭一門会反省記 [大衆芸能]

昨日(9月26日)、雑司ヶ谷割烹大倉で第15回扇好亭一門会が催されました。
私、扇好亭酔平は、かぶり(中入り後すぐ)で『手水廻し』を演らせていただきました。
次回は何を演ろうかと、楽しい時間はひと晩かぎり。
本日からねじり鉢巻(そんなことせえへんが)で臨戦態勢。
なんですが、ブログやってる手前、報告を申し上げます。

まず、『手水廻し』という噺についてご説明申し上げます。
石家荘で餃子ばっかり食ってるカニ助先生から、「どんな話?」と聞かれ、「長い頭をまわす話」と、わずか8文字で答えたもんの、いくらなんでも不親切なんで。

「手水を使う」という古い大阪弁があり、「顔を洗う」という意味。
顔を洗うための湯や歯を磨くための塩やなんかを持ってきてもらう場合は、「手水を廻してくれ」と言います。
徐々に全国的に広まった言葉かもしれませんが、昔は大阪(大坂と表記すべきか)でしか通じなかった。

うちの母方の祖母なんかはトイレのことも「手水」と言ってました。
「ちょっとお手水へ」とか言ってた。
手水鉢という言葉も普通は使いませんが想像はつくと思います。
今は取り壊されましたが、東住吉にあったうちのおかんの実家には、石でできた手水鉢があった。
もちろん水道があるので、手水鉢は手水鉢として使われず、金魚を泳がしてた。

脱線しますが、「顔や手を洗う」という意味の「手水」が、「トイレ」という意味で使われるのは面白いと思います。
それはまさしく、現代の「お手洗い」と「トイレ」の関係だからです。
中国語では「洗手間」で、韓国語では「ファジャンシル(化粧室)」。
どうしても「便所」とは言いたくないらしい。

そんなこんなの話をマクラで振ろうかとも思いましたが、他にやりたい話があったので前日に中止しました。

大坂の人が丹波の貝野村というところに宿をとった。
朝起きて顔を洗おうと手水を部屋に廻してくれと頼む。
宿の仲居さんは意味がわからず宿の主人(旦さん・旦那さんのこと)に相談に行く。

「仲居さん」と書きましたが、この落語の時代から考えて、この言葉は使えません。
「お女中さん」と言うべきですが、何人かのプロの落語家は明らかにこの言葉を避けている。
「女中」という言葉が現代では死後となっているため・・・であるなら、落語には使えない言葉が他にも山ほどある。

「女中」という言葉に差別的な臭いを嗅ぎ取ってしまう。
「誰ぞいなさらんか」という表現で、職業名を言わなくてすむようにしている。
「古典だから」という理由で伝えられたとおりに演る必要はないと思います。
聴いてくれるのは、今、生きている人たちですから、不快感をもたれる恐れのある表現は廃すべきと私は考えます。

仲居さんは名前を「オキヨどん」といいます。
旦さんも手水を知らないんだけど、知ってるふりして板場に聞けと言う。
板場の喜助どんはもちろんわからず、旦さんに聞きに行く。

めんどくさくなってきた。
やめよっかな。

よーするに寺の坊さんに「手水ってなに?」と聞いたら、「長い頭のことや」というので、隣村のイチベエさんを呼んで来て長い頭をぐるぐる回さす、という話。
イチベエはひっくり返って目をまわし、客は怒って帰ってしまう。
「手水」の意味を知るため旦さんと喜助は大阪へ行く。
出てきたのはアカの金だらい(アカとは銅のこと)に湯を張ったものと、塩と歯磨き粉と房楊枝。
現物を前にしてもそれが何であるかわからないおとぼけ二人組。
飲むもんやと思い込み、顔洗う湯をがぶがぶ飲む。
ふたりで泊まっとるんやから手水も二人分いる。
あとからもう一人前が出てくるが、最初のを二人で飲み干すのが精一杯。
「すんまへんが後の一人前はお昼にいただきます」がサゲ。

『貝野村』という噺があり、その後半が独立したのがこの『手水廻し』。

私の説明で物足りない方はこちらをご覧下さい。
http://homepage3.nifty.com/rakugo/kamigata/rakug143.htm
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/2975/sub93.html

ヤマ場が2ヶ所あります。
イチベエが頭をまわす場面と、出てきた手水をがぶがぶ飲む場面。
頭をまわす場面に独自の工夫を凝らしました。
最初は、イチベエが頭をまわしながら走り回り、客が逃げ回るというドタバタを考えました。
が、諸般の事情により、今回は断念しました。

結局、ただ長い頭を回すだけでなく、「逆回転」、「8の字回し」、「最初は小さくだんだん大きく回し」といった3種類のオリジナルな方法で頭を回すことにしました。
ポイントは、頭を回すイチベエを前にした客のリアクション。
まわる頭に合わせた客の目線が大事。

目線といえばこの落語、目線が特に大事な噺かもしれません。
長い頭のイチベエが入ってきたときの客の反応。

コントなら長い頭のかぶりもんでもして出てくればすむ話。
落語はそういうちょこざいなことはしない。
「頭が長い」ということを客の目線で表現する。

このへんの演技は、「まあ、こんなもんか」と思っています。
ただ、もうひとつの見せ場である手水を飲む場面。
最後まで悩んだ末、自分なりの答えが見いだせず、中途半端な演技になってしまった。

あと、頭を回したあと、息を整えるのに時間がかかった。
平気な顔をして呼吸を整えるわけですが、本番はやはり稽古以上に激しく回したみたい。
深呼吸のタイミングを外し間が悪くなった。

まるでスポーツやな。

毎回そうなんですが、マクラに力を入れます。
今回は特に喜んでいただけたようなので、特別にブログで紹介します。
(ほんとは過去のマクラもみんな紹介したいんだけど)

          ■

一杯のおはこびで有難く御礼申し上げます。
最近はやっと落ち着いたんですが、春から夏にかけてあちこち出張させていただきまして。
今年は大阪と広島が多かったんですが、6月でしたか、大阪方面へ2週間ほど出張いたしまして。
まあいろいろ仕事も立て込んでましてなかなか休みが取れなんだんです。
そこへ2週間の出張、それも遊びなれた大阪ということで、ちょっとまあ、羽を伸ばそかと。
これがいかんかったんです、気持ちに隙があった。
北新地で仕事の関係の方(ogacci先生)と飲んでまして、別れたんが午前1時。
そのままホテルに戻って寝りゃぁいいんですが、まあ気持ちが浮ついてますから。
あっちぃふらふらこっちぃふらふら。
気がついたら兎我野町。
こわい町なんです。
ほん弥師匠は「兎我野町のどこがこわいねんな」とおっしゃいますが、あの方はご存じないんです。
ほんま怖い町なんです。
「ちょっとお兄さん、1時間4千円で飲み放題。寄ってかへん?」とか言われまして。
気持ちに隙があるもんでっさかい、ふらふら~ついてきまして。
わけのわからんビルの地下のわけのわからんスナックですわ。
最初は気持ちよう飲んでたんですが、水割りに何を入れられたのか知りません。
途中から全く記憶がないんです。
気がついたら夜明け前の薄暗い道をひとりでとぼとぼ歩いてまして。
「俺、何してるんやっけ」とまわりを見回したら、左手に大きな土手がある。
何やろ思て登ってみましたら大きな川が流れてまして。
荒川とも様子が違うしどこの川かいなと。
見たら遠くの方に、梅田に空中庭園ゆうのがあるんですが、その赤いランプがピカ~ピカ。
「これ、淀川やがな」ゆうんで、あわてて梅田へ戻ってホテルで仮眠して仕事へ行ったんですが。
夕方ごろですか、ふと財布の中を見たら、万札がごっそりおまへんねん。
2週間の出張でしょ。
ほんまは10万でええところを遊びたいもんやさかい15万借りてましてん、会社から。
それ、みなおまへんねん。
15万でっせ。
うわあ、昨日の店でやられたんや~思うて、警察ぅ~ゆうてもどこに店があったか覚えてません。
しゃあないさかいよめはんに携帯メールして。
15万円口座に入金して~ゆうて。
あの携帯メールゆうのん、あれ、便利でっせ。
直接しゃべらんでええんです。
かかってきたら出んかったらええだけやし。
そんなことでせっかくの楽しい出張がわやんなりまして。
しょんぼりして東京へ帰ってきたんです。
出社しましたら社長に呼ばれまして。
「おい、関西」。
うちの社長、私のこと「関西」ゆうんです。
自分も関西のくせに。
「おい関西、お前の過去2年間の未払い残業代をはろてやる」。
この人、やっと性根入れ替えたんかと。(ここ、大爆笑)
「社長、有難うございます」。
聞きましたら150万あるんやそうで。
そんなにあるかいなとも思うんですが、まあ、150万あると。
で、相談なんやが・・・その150万を15万にまからんかと、こんなこと言いよるんです。
「社長、何を言うてまんねん。150万が15万にまかりまっかいな。アホなこと言いなはんな」と言うべきところ・・・ちょうどその15万がなくて困ってたんです。
その場でサインしてしまいまして。
この話をほん弥師匠にしましたら、「キミとこの社長と兎我野町はつるんでるんちゃうか」って・・・。
どこに落とし穴があるやわからんなあゆうて。
今でこそ国内海外を問わず、どこへでもちょっと行って帰ってこれますが、昔はそら大変で。
そういった時代にはちょっと離れた土地へ行くと言葉が通じん、わからんということはずいぶんと多かったそうです。
昔、大坂では朝起きて顔を洗うことを「手水を使う」と言うたんやそうで・・・

(ほんまは怖い梅田兎我野町旅情 完)

【業務連絡】
明日(9月28日)より、紀伊國屋書店新宿南店5Fで「ディアスポラ」をテーマにしたフェアをやります。
10月11日と12日にはトークイベントもあります。
詳細はこちら。
http://www.akashi.co.jp/home.htm
是非、ご来店ください。

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ogacci

けして私がつるんでるわけではありません。しかし出来すぎたはなしやね。
by ogacci (2009-10-06 19:44) 

yutakami

ご無沙汰をしています。
お疲れ様でした。
by yutakami (2009-10-10 12:04) 

リス太郎

ogacci 先生へ
怪しいな。つるんでるんちゃいますのん?(笑)
by リス太郎 (2009-11-11 07:37) 

リス太郎

yutakami 先生へ
お久しぶりです。ちっとも訪問せず不義理をしており申し訳ありません。
by リス太郎 (2009-11-11 07:38) 

リス太郎

A2Z さんへ
ナイス有難うございます。
by リス太郎 (2009-11-11 07:40) 

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