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あれから12年 (阪神淡路大震災)

1995年1月17日午前5時46分52秒だという。
前年の10月に結婚したばかりの私と家内は大阪府守口市のマンション4階に住んでいた。
そばには古川という小さな川が流れており、ゴミがたくさん浮いていた。
私は結婚する半年前から住んでいたのだが、電気製品が一切なかった。
夏場は窓を開けていると臭くてたまらなかったが、ひと夏すごせば気にならなくなった。
川の対岸は寝屋川市で、今は撤去されてしまったがボロボロの平屋の集合住宅があった。
布団を並べて寝ていた私たち夫婦は「ゴーッ」という地響きに目を覚ました。

マンションが小刻みにガタガタ揺れたかと思うと、突然、下から突き上げられるように部屋全体が跳ねた。
そのとき私は地震だとは思わなかった。
ミサイルでも落ちたのかと思った。
最初の衝撃は今まで私が経験したことのある地震とは全く違っていた。
トランポリンのように床が跳ねるのである。
縦揺れというやつなのだが、続いてすぐに激しい横揺れとなった。

私は家内を守るため馬乗りになった。
家内は私の下で叫んだ。
「頭に布団かぶって。電気が」
振り向いて天井を見上げるとぶら下がった電気が狂ったように振り回されている。
輪っかの蛍光灯が頭に落ちてきたら頭に輪っかができてしまう。
私は言われたとおり掛け布団を頭にかぶった。

隣のキッチンでは食器棚の観音扉が開いてガチャガチャと食器が割れていた。
私は「このマンション、もたへんな」と思った。
いよいよとなったらベランダから川へ飛び込もうと思った。
ゴミの流れる川だが仕方がない。

幸い、川へ飛び込む必要はなかった。
揺れはおさまり、部屋の中はめちゃくちゃだがマンションが倒壊することはなかった。
揺れていた時間はそんなに長くないはずだが、私には非常に長い時間に思え、またその間にいろんなことを考えた。
「死ぬ」ということも考えた。

揺れがおさまって間もなく、もう一度かなりきつい揺れがあった。
再びガッチャンガッチャンと器が割れる音を聞いて、家内は泣き出しそうだった。

テレビをつけてみる。
ニュースでは震源地を「東海地方か?」と言っていた。
愛知や岐阜には仕事上の知人が多いので心配した。
また、大阪でこんだけ揺れたのに震源地の揺れはどんなにすごいんだろうとも思った。

しばらくして夜が明け、外が白々と明るくなってきた。
テレビのニュースは震源地を淡路島北部と訂正。
そして神戸の街の信じられない光景が次々とテレビで流された。
大変なことになったぞと思った。

神戸には父母と弟が住んでいる。
電話してみるが当然つながらない。
しばらくすると四国の親戚から電話が相次いでかかってくる。
神戸はどうなっとるんぞなもしと。
こっちが聞きたいぞなもしと。

幸い、私の知人友人に犠牲者はいなかった。
アパートが倒壊しても自力で壁を破って脱出し火災から逃れた。
しかし家族を失った人は仕事の関係で何人かおられた。
隆起し地割れが走った道を気をつけて歩いて葬式に行った。
礼服の在庫がはけるとニコニコする不心得者もいた。

さて、今日、私が一番言いたい話をする。

テレビの映像というのは事実であって事実でない。
いくらテレビのニュースで被災地の悲惨な状況を流しても誰もわからないのである。
ビルが倒れた三宮の駅前に立ち、ほこりを吸い、何かが焼ける臭いをかがなければわからない。
ぬくぬくしたお茶の間で見る映像では何もわからない。
だから事実ではないと言える。
世界中で毎日起こっている紛争。
わかりっこない。
だから無関心でいられる。

地震のあと暫くは公私両面で忙しかった。
私が苦しんだのは仕事面だ。
貿易の仕事をしていた。
神戸港の保税倉庫には船積みを待つ資材があった。
納期どおり中国に着け、納期どおり製品にして納めないとペナルティーだと言う。
関東を中心に全国に店舗展開する代表的小売業の話。

アパレルメーカーの営業部員も、大手小売業のバイヤーを神のように崇めているから面白い。
営業は朝貢外交ではない。
当時は完全に買手市場だったので余計にそうだったのだが、やはり異常である。

神戸港も壊滅状態だった。
神戸から船積みすることはできない。
ガントリークレーンがひっくり返っているのである。

商品を大阪港へ移すにも道路が寸断されている。
新たに手当しても船積みに間に合わない。
大阪港にも許容量というものがある。
生産計画を見直し、それに従ってもらうしかない。
それがわからないのである。

私が大型スーパーがあまり好きでないのはそういった理由もある。
出来るだけ小さいスーパーか昔ながらの商店街を利用したい。
イトーヨーカドーでは玉ねぎ1個買いたくない。


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ホイーヤ

はじめまして、新着より飛んで参りました。
5時46分、黙祷をいたしました。
私も本日は、当時のことを長々と書いていきたいと思っております。
では、失礼いたします。
by ホイーヤ (2007-01-17 06:14) 

リス太郎

ホイーヤさんへ
はじめまして。いらっしゃいませ。
私も黙祷しました。記事書いてる途中でしたが。
震災については書きたいことが山ほどあるんです。これからすこしづつテーマを絞って書いていきたいと思います。
いい記事を期待しています。必ず読みに行きます。
by リス太郎 (2007-01-17 06:23) 

ホイーヤ

リス太郎さん、ありがとうございます。
被害の少なかった私ではありますが、やはり、書きたいことはたくさんすぎて、まだ まとまっていません。
数年後のちょっとお笑いネタ(?)もあります。
夕方になるかも、夜遅くになるかもしれません。
ただ、どなたか一人の方でも見てくださって、なにかを感じてくだされば 幸いです。
いい文が書けるかどうかはわかりませんが、とにかく書くつもりです!
by ホイーヤ (2007-01-17 06:35) 

リス太郎

ホイーヤさんへ
私もおもろい話ありまんねん。(笑)
でも、今日は不謹慎なのでやめときます。また改めて。
いっぺんに書くと大変なので何回かに分けるのもいいと思います。ぼちぼちやりましょう。
by リス太郎 (2007-01-17 06:41) 

めぎ

震災直後に納期とか言ってる話があったのですね!
なんてことだ。
私もテレビで見てただけの口ですから、想像しか出来ません。
これからの記事を読んでも、やっぱり想像でしかないですね。
それでも、全く想像しないよりはいいかと思ってます。
by めぎ (2007-01-17 07:29) 

もん

学生時代、最後に挙げていらした会社でバイトをしていました。
社内に入ったらコートを脱げ、ご苦労様は目下のみに使う言葉、
駅から会社まで、何処にお客様がいらっしゃるか分からないから、
Gパンや上着を肩にひっかけて歩くようなことはするな、等々、
勉強になったことも少なくなかったですが、
中小の卸に対しての姿勢が、このチラシや企画の価格か、を
見る機会でもありました。
大震災の朝、私は東京でしたが、勤務先の弟会社が神戸にあり、
支柱がボッキリ、立ち上げた社員たちは連日徹夜で修復や整理にあたったそうです。自分は、灘の酒や牛肉が暫く入らない、をお客様に示す職場にありましたが、「神戸は大変らしいねー」が時節の会話のように交わされながら、お一人数万のコースが進み、高価なワインが社名領収書で勢いをつけて消えていくこと、なんだかなにかが狂っている、と思ったバブルの余波期でした。
by もん (2007-01-17 15:37) 

リス太郎

めぎさんへ
納期の話?あたしゃ疲れきったですよ。
関西からちょっと離れるとわかんないんですね、状況が。あんだけニュースでやってんのに。現地はそれどころじゃないのにね。
by リス太郎 (2007-01-18 05:25) 

リス太郎

もん・とれぞーさんへ
90年代は「価格破壊」という言葉が金科玉条のごとく叫ばれた時代でした。バブルが崩壊し、(とはいえ、もんさんがご指摘のように数万円のコース料理は健在)デフレが急速に進んだ時代でした。(今もデフレは完全に終わっていませんが)
そんななか小売店の立場がどんどん強くなり、生産者や卸は逆らえなくなりました。何かというとペナルティーを持ち出す大手小売店。買取条件で安く仕入れた商品をいちゃもんつけて返品。やりたい放題。自分の言うことをみんなが平身低頭で従うので勘違いしてしまう。
「お客様第一」の考え方は決して間違ってはいないのですが、それを生産者に過度に要求した結果、必ずしも消費者が満足する商品になっていないという側面もあります。
by リス太郎 (2007-01-18 05:48) 

ホイーヤ

私のブログにコメントをありがとうございました。
住んでいた地域は 詳しくは避けますが(過去のことではありますが、ネット上ですので・・・)、被災指定地域だったはしっこです。ですから、本当に被害は少なかったんです。
by ホイーヤ (2007-01-18 13:31) 

リス太郎

ホイーヤさんへ
被害が軽くてなによりです。ただあの揺れは経験しないとわからんやろうね。うちはベッドの足元にリュックを置いてます。あと、食器棚の観音扉は寝る前にゴムでしばってる。
by リス太郎 (2007-01-18 23:42) 

リス太郎

mompeli さんへ
わざわざ来てくれて有難うございます。
by リス太郎 (2007-05-06 10:31) 

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