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正義なき国 (在外被爆者の手当受給を認めない福岡高裁)

韓国人被爆者の崔季澈(チェ・ゲチョル)さんは2004年に78歳で亡くなった。
崔さんは1980年に治療のため来日、被爆した長崎市で手当の支給を申請。
被爆者健康手帳を取得したが、韓国へ帰国したため支給は1ヶ月で打ち切られた。
遺族の六女・崔美淑さんは、未払いの手当など約960万円を国と長崎市に求めていた。
今回、1月22日の控訴審・福岡高裁は一審判決を取り消し、原告の訴えを全面的に退けた。
崔さん側弁護士は上告する方針らしいが、血も涙もない判決に怒りがおさまらない次第である。

記事の正確を期するため、出来るだけ複数の新聞に目を通すよう気をつけている。
朝日、日経、産経、読売の朝刊をチェックした。
読売は記事の掲載自体がなかった。

上記3社の中では日経が一番多く紙面を割いている。
また、産経の記事は非常にわかりやすく理路整然と書かれている印象を受けた。
朝日が意外と小さな扱いで残念である。

1974年、旧厚生省は公衆衛生局長通達(402号通達)を出した。
これは「旧原爆特別措置法は日本に居住関係を有する被爆者にのみ適用する」と規定した。
2002年の大阪高裁判決により国は通達を廃止している。

行政側は地方自治法上の請求権の時効(5年)を主張してきた。
2005年の一審判決で長崎地裁は、「在外被爆者にとって重大な障害となった通達をつくった行政側が、時効を主張するのは信義則上許されない」とした。
つまりわかりやすく言えば、「日本を離れた被爆者を見殺しにしておきながら時効もへったくれもあるか」ということである。
長崎地裁は請求の一部である82万8千円(支給期間を「最長3年間」と定めた当時の制度に基づき2年11ヶ月分)を支払うよう長崎市に命じた。

これに対し行政側が控訴した今回の福岡高裁。
やはり争点となったのは手当受給権の時効であった。
判決は402号通達を是認できないとしながらも、「(原告は)法制度上、司法的救済を求めることができたのにしなかった」と判断、「行政側の時効主張は信義則違反とは言えない」と結論づけた。
つまりわかりやすく言えば、「時効期間中に訴訟を起こさんあんたが悪い」ということである。
これはもう私には喧嘩を売っているようにしか聞こえない。

訴訟を起こせと簡単に言うが、一般庶民がおいそれと起こせるものではない。
まして被爆者本人も家族も韓国という外国で生活している。
被爆者を看病しながらやっと暮らしているのである。

在外被爆者の手当受給と時効をめぐっては、去年2月にブラジル在住被爆者の訴訟があった。
広島高裁は「在外被爆者の権利を長年否定してきた行政側の時効主張を認めるのは、著しく正義に反する」と指摘している。

弱者の権利を守り不正を糺すのが司法の役割である。
裁判所に厳しい目を向けることを忘れてはならない。


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リス太郎

yutakami さんへ
この記事にナイスをもらえるのは格別に嬉しいです。
ありがとうございます。
by リス太郎 (2007-01-25 08:30) 

目玉男

めぎさんのところから来ました。初めまして目玉男です。
日本人として、日本への怒りのナイスです。
 
by 目玉男 (2007-01-28 10:10) 

リス太郎

目玉男さんへ
はじめまして。ようこそ。怒りのナイス、ありがとうございます。「目玉男」って、面白い名前やなあと思ってました。
「不二家」やら「あるある」やらと、くだらないことにしか目が行かない日本人。世の中にはもっと怒らねばならないことが山ほどある。
by リス太郎 (2007-01-28 14:10) 

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