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ショート落語『粗忽長屋』 [大衆芸能]

古典落語には思いもつかないような発想の噺が多く、そんな噺を中心に、古典落語と私自作の創作落語をショートバージョンに加工して、当ブログで公表していこうと思います。短い時間で楽しめ、お年寄りも疲れずに楽しめ、子どもも覚えて演じやすくしています。古典落語なので著作権はありません。
同じことはジャパライフのブログでもやるつもりです。
https://www.japalife.jp/
ショート落語シリーズを始めるにあたり前置きが長くなったので、今日、取り上げる落語についての話は以下にゆずります。

『粗忽長屋』という落語は比較的ポピュラーな落語です。主に江戸落語で好んで演じられますが、私は関西の人間なので上方落語で台本を書きました。「お前はもう死んでいる」と言われた奴が、「うそやろう」と言いながら、だんだん本気になっていくという、ウィキペディアによると『絵本噺山科』の一遍「水の月」というのが原話だそうで。ちなみに「粗忽」とは「あわてもの」のことです。

   ■■■

「えらい人だかりやな。なんやこれ?」
「行き倒れでんねん」
「行き倒れてなに?」
「道で人が死んでまんねん」
「ちょっと見してんか」
「これこれ、関係ない人が勝手に前に出るな」
「あっ!」
「知ってる人か?」
「知ってるもなにも、これ、わいの友だちのよっちゃんや」
「ああ、よかった。これでやっと身元がわかった」
「いえね、今朝もよっちゃんとしゃべってましてん。今日はなんか調子悪いゆうて。気ィつけなあかんぞゆうてましてんけどな。こんなとこで死んでるやなんて」
「いや、ちょう待ちや。この人、今朝から死んでまんねん」
「早速、本人に知らせてきますわ」
「知らせるて何を?」
「お前、道頓堀で死んでるぞゆうて」
「いや、あのね、この人はここで死んでまんねん。死んでる人に死んでることを伝えるてどういうことですねん?」
「どういうこともこうゆうこともとにかく本人に知らせな」
「だから本人て誰ですのん?」
「ここで死んでるよっちゃんやがな」
「わけわからん人でてきたで」
「とにかく行ってきま」
「ああ、ああ、行ってしもた」
   ―――
「おいっ!よっちゃん!」
「なんや、まっちゃん」
「お前なあ、そんなとこで寝ころんでる場合ちゃうで」
「寝ころんでる場合て、今日はわい、休みやがな」
「それが休んでる場合ちゃうねん。落ち着いてよう聞けよ」
「いったいどないしてん?」
「お前な、お前、お前はもう死んでるで!」
「何をゆうんやお前は。わいはこうして生きてるがな」
「それはお前の思い違いや。俺はこの目で見てきたんや」
「見てきたて何を?」
「お前が死んでるとこを」
「ほんまか?」
「そうやがな。お前、今朝もゆうてたやろ。今日はなんや調子悪いゆうて」
「そういえば調子悪かったな。夕べ道頓堀で飲んでて、二日酔いかなんか知らんけど今朝から調子が悪い」
「見てみィ。そやさかいお前、道頓堀で死んでたんや」
「いや、わい、道頓堀から帰ってきてるで」
「あのな、ようく思い出してみィ。お前、道頓堀でふぐ食うたやろ?」
「ああ、ふぐは食うた」
「そのふぐにあたって死んでしもたんやがな」
「あっ!そうか!ほな、わい、もう死んでんねんな」
「そやがな。そうとわかったら早速いこう」
「どこへ?」
「道頓堀やがな」
「何しに?」
「お前の死体を引き取りにや」
「なんかようわからへんけどまあええわ」
   ―――
「ごめんやっしゃ。本人連れてきましたで」
「また来たで、この人」
「おい、よっちゃん、よう見てみィ。これ、お前やろ?」
「あっ!あ~っ!」
「おかしな奴がまた一人増えたがな」
「間違いおまへん。これはわいや。おい、わい、こんなとこで死んでまうやなんて」
「いや、あのね、わけのわからんこと言わんように。あんたがあんたの死体だいてどないしまんねん」
「本人が本人や言うてんねんから間違いおまへんやろ。さあ、よっちゃん、よっちゃんを背負ってよっちゃんちへ帰ろう」
「ちょっと待った、待った!勝手に死体をおぶったらアカンて」
「ちょう待てよ。おぶわれてるわいは確かにわいやが、おぶってるわいはいったい誰だろう?」

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コメント 37

リス太郎

xml_xsl さんへ
早い。(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=pg_3XXDjQME
by リス太郎 (2020-06-28 00:28) 

(。・_・。)2k

だ 誰なんだ
よっちゃん フグかぁ フグと腹上死 どっちが幸せな死に方だろう
死ぬ前に高級な物食べるのも ちょっと良いですよねぇ

by (。・_・。)2k (2020-06-28 06:49) 

リス太郎

(。・_・。)2k さんへ
フグと腹上死ですか。そういう連想はしなかったなあ。
死ぬ前に何が食べたいか。宮沢賢治の妹は「あめゆじゅ(雨雪)とてきてけんじゃ」と言ったとか。ひとそれぞれ価値観というのは違いますね。「あめゆじゅ」。とっても切なく感じます。
by リス太郎 (2020-06-28 10:49) 

リス太郎

「よっちゃん」は上方落語では「芳公」というんですが、「芳公」では子ども向けではないので「よっちゃん」にしました。
by リス太郎 (2020-06-28 10:51) 

リス太郎

ストックンさんへ
株主総会もコロナのせいで開催するにも大変で。個人株主は入れてもらえなかったり。結局、弱いものにしわよせがくるんですね。
by リス太郎 (2020-06-28 10:54) 

リス太郎

四辻の狸さんへ
財政赤字1000兆円超。どうするつもりでしょうねえ。みんな国民からの借金なんだけど。「国債もってりゃ大丈夫」という時代が終わればすぐに日本は崩壊するでしょうね。
by リス太郎 (2020-06-28 11:02) 

リス太郎

売りたくても売れない国債。ただの紙切れ。
by リス太郎 (2020-06-28 11:03) 

リス太郎

じらし~~~
by リス太郎 (2020-06-28 11:04) 

プー太の父

誰だかわからない自分が、死んでる自分を背負ってる
なんて可笑しいような怖いような落語ですね(^∀^*)
by プー太の父 (2020-06-28 14:15) 

リス太郎

プー太の父さんへ
こういった笑いの発想は中国から来ていると思われ(醒酔笑など)、中国の笑話集が原型とみられます。ですが落語の素晴らしさは、日本人ならではの感性で、「一人が座って全員を演じ分ける」という芸を生み出したことです。こういった芸能は世界中探してもないでしょう。そして落語の発想は日本人のDNAに組み込まれたかのように、ドラマや芝居でも無意識に応用されています。フランス小咄集などを読むと、東洋人と西洋人の笑いに関する発想の違いがよくわかります。もちろんフランス小咄もおもしろいです。
by リス太郎 (2020-06-28 19:39) 

リス太郎

次回は『持参金』のショートバージョンをつくろうと思っています。この落語もおもしろい。まわりまわって20円は誰も払わなくていいという話。結果オーライなんですが、「なんやアホらしい」と解散していく姿がオチのあとに見えて、私の好きな落語のひとつです。ただ、番頭が愛人に子どもを作らせてしまう話なので、子ども向けにはやれない話です。
by リス太郎 (2020-06-28 19:44) 

リス太郎

私の十八番の『くっしゃみ講釈』や『住吉駕籠』は短くするのが難しい噺です。これらは中国の笑話集から来ているものではないと思われます。短い笑い話があってそこから発展したとは思えないからです。日本人の完全自作に間違いありません。ただ日常のおかしな光景をふくらまして作ったんだと思います。
by リス太郎 (2020-06-28 19:50) 

リス太郎

『親子酒』を短くするのは簡単です。
「ただいま~」
「お義父さん、またこんな酔っぱらって」
「倅はまだ帰ってへんのか。毎晩毎晩酒ばっかり飲み腐って。ひっく。年いたもんはしゃあないとして若いもんが酒ばっかりくらいやがって。今日という今日は夜とともに説教しますぞ。夜とともに…ぐ~」
「ちゃちゃ~ん、ちゃん。あいたっ!こら、気ィつけて歩けアホ!あ、ポストか。ポストにぶつかったんや。あんたもえらい酔うてまんな。顔が赤いでっせ」
「ただいま戻ったでぇ!あ!親父、また酒飲んで寝てけつかるな。年いたもんが酒ばっかりくろて。若いもんはしゃあないとして。こら。親父。起きろ」
「いたたたた。誰や鼻をつまむんや。あ!倅やな!毎晩毎晩、酒ばっかり飲みやがって。見てみィ。酒の毒がまわって顔が3つも4つもあるぞ。そんな化け物にこの家は継がせるか!」
「いらんわい、こんなぐるぐるぐるぐるまわる家」
by リス太郎 (2020-06-28 19:58) 

リス太郎

一応、ショート落語メモに貼り付けました。ジャパライフブログでガンガン発表します。とにかく読んでもらわな話にならんねん。サイトにアクセスしてもらわな話にならんねん。スカイ・シーで格安チケット買ってもらうのはその次や。
https://www.japalife.jp/
by リス太郎 (2020-06-28 20:05) 

リス太郎

今のジャパライフの敵はジャパンライフや。「ジャパンライフ」で検索したら「ジャパライフの間違いでは?」と出るようにする。ジャパンライフのまずい記事がヒットしなくなってうれしいやろ。
by リス太郎 (2020-06-28 20:08) 

リス太郎

ネオ・アッキーさんへ
若い人からプリキュアの話をふられてついていけないようではいけないんですね。少なくとも私のようなエンタメっぽいことを商売(?)にしてる人間は。何度も話題にしてるけど藤山寛美はベストセラーとか小説でもなんでも片っ端から読破してたと。大衆に受けるものを知らずに大衆を笑わせたり泣かせたりできるかというのが彼の持論だったようで。
by リス太郎 (2020-06-28 20:16) 

リス太郎

鉄腕原子さんへ
プリキュア漫才せえへん?
by リス太郎 (2020-06-28 20:17) 

リス太郎

ありささんへ
ゲームの世界もおんなじこと言えるね。ゲームの話をしたら相手がなんにもゲームを知らないとしらける。そんな奴の落語はききたくない。高座でぴょんぴょんするぐらいはしてほしい。(たい平か)
by リス太郎 (2020-06-28 20:22) 

SORI

リス太郎さん おはようございます。
ショート落語、楽しく読ませていただきました。
古い記憶の中で、こうゆう感じの落語を聞いたことがあるように感じました。
by SORI (2020-06-29 05:40) 

アニマルボイス

「頭山」や「粗忽の使者」なんかもお願いまーす。m(__)m
by アニマルボイス (2020-06-29 12:51) 

リス太郎

ドトールです。ジャパライフのページに広告が乗らないのでパソコン用に切り替えたり戻したりしてるうちにソネットがパソコン用から戻らなくなりました。代わりにみなさんのブログに飛びやすくなり、自分のアイコンが表示されるか試してみます。字が小さくてやりにくいのですが。
by リス太郎 (2020-06-29 13:47) 

リス太郎

SORI さんへ
昔の人はよくこんな面白いことを考えたなと感心します。クロスケさんもこの話は聴いたことがあるはずです。五代目柳家小さんが絶品です。YouTuberでも聴けます。是非。
by リス太郎 (2020-06-29 13:52) 

リス太郎

アニマルボイス先輩へ
「頭山」は上方では「さくらんぼ」というタイトルで演じられます。さくらんぼの種を飲み込んだら頭から芽が出て大きな桜になる。その下に人が集まり花見をするのでやかましくて仕方ない。腹が立った主人公は桜の木を手でむしりとってしまう。そこに大きなくぼみができ、雨がふって池ができる。やはり人が集まり魚釣り。いやになった主人公は池に飛び込み自殺するという話。SF落語の代表と言われます。「粗忽の使者」はどんな話だったか度忘れしたので調べておきます。ショート落語をいくつもつくって絵も描いてもらって出版したいです。
by リス太郎 (2020-06-29 14:07) 

リス太郎

社会福祉協議会にしろ日本政策金融公庫にしてもそうなんだけど。運転免許証やパスポートのコピーに加えて外国人は在留カードのコピーを求めてくる。運転免許もってる外国人は少ないからパスポートでいいんだけど「パスポート(顔写真のページ及び現住所等の記載のあるページ)のコピー」とか平気で書いてある。パスポートに現住所なんか書いてありますか?あなたのパスポートに住所のってます?常識で考えればわかると思うんだけど。
by リス太郎 (2020-06-29 17:44) 

リス太郎

日本のパスポートには住所を自分で書く欄があるけどこれは公的な証明じゃないからね。いろんな国のパスポートをみてるけど日本のようにパスポートという公文書に手書きで書き込む(偽造)国は他に知らない。本籍的なものを役人が登録して記載している場合は多い。
by リス太郎 (2020-06-29 17:56) 

リス太郎

一人取締役で従業員もいないのに社保に入るととんでもない請求くるからね。法律上、入らなきゃいけないし、それを指導する立場だから入ったけどさあ大変。臨時株主総会を7月1日に開いて役員報酬1万円にして年金事務所に行ったろかいと。だってまだそんな稼げないもん。でもよくわかんないんだけど期日を超えて役員報酬を変更するのはできないと聞いたことがある。入管は議事録を必ず要求するのですが、わしら日本人が会社つくるときはそんなもん議事録いちいち作る必要は必ずしもない。どこに提出するわけでもなし。うちの専属の会計士に聞くと、例えば役員報酬月20万と決めて、払えなくなったらそのぶん課税対象になるらしい。日本年金機構と税務署と入管は怖い。
by リス太郎 (2020-06-29 18:37) 

リス太郎

ムナルに行ってきます。ジャパライフの仕事としのはら行政書士事務所の仕事とふたつある。妻は行政書士事務所の仕事をジャパライフに組み込めというんだけど、それはそれで問題ある。事務所があるから行政書士の仕事ができるわけで。それをジャパライフに入れちゃうと会費を払うの誰だとかいう問題もあるけど、事務所の利益をジャパライフの利益にすると二重課税されちゃうと思う。うまく分けて振り分ければいいんだけど、それするとお客さんへの請求書・領収書がばらけてしまい、私も管理しにくい。
行ってきます。考えなあかんことばかり。
by リス太郎 (2020-06-29 18:46) 

リス太郎

kiyokiyo さんへ
イージス艦1700億円でっせ。あってもしょうないのに。アメリカのご機嫌とるため買わされてるだけ。いやはやアメリカさんの殿様商売には頭が下がりますなあ。
by リス太郎 (2020-06-29 23:18) 

リス太郎

mayu さんへ
ネコはなぜこけないのだろう。足が4本あるからか。
https://www.japalife.jp/topics/detail/id=119
by リス太郎 (2020-06-29 23:21) 

リス太郎

ぼんぼちぼちぼちさんへ
落語家は舞台ではなく高座といいますが、あれは舞台の上に組み立てた「ハコ」に赤毛氈をかけた部分をいうわけで。落語家が高座をおりて舞台の前っぱりに出てきて「ここ!ここを聞いてほしいんだよ!いいかい?今からオチを言うよ」というのは見たことも聞いたこともありません。
枝雀師匠は座布団に足の小指一本でもかかっていればセーフだと言ってまして。改めてYouTubeなどで見ると縦横無尽というか、でも上下も無茶苦茶なようにみえてちゃんと伝わってる。上手ばかりを向いてしゃべる傾向が強いように見受けるんですが、突然、下手を向いてよめはんが強烈なツッコミを入れたりとか。
で、なんでしたっけ?「前ばり」でしたっけ?
by リス太郎 (2020-06-29 23:32) 

リス太郎

アニマルボイス先輩へ
『粗忽の使者』について調べました。五代目(志ん生)か三代目(志ん朝)のを子どものころ聴いた記憶があるような。あまりよく覚えていません。上方落語にはないのかと思い調べたところ『月並み丁稚』がそれにあたるのだと。この落語は上方落語の中でもよく演じられるほうだと思うのですが、私は聴いたことがありません。不勉強であらすじもよく知りません。ネットでざっとあらすじを調べましたが、う~ん、どうでしょう。これをショート落語にしようと思うとかなり改変が必要かと。またいつかチャレンジします。
by リス太郎 (2020-06-29 23:43) 

リス太郎

今日はちょっと時間をかけてジャパライフのブログを書きました。
おもしろいのかおもしろくないのかわかりませんが、私には非常に興味のあるテーマです。
https://www.japalife.jp/blog/detail/id=133
by リス太郎 (2020-06-29 23:50) 

リス太郎

これをコピーして明日、入管で読みながらショートに仕立て上げようと思うのですが。その前に『粗忽の使者』のストーリーも押さえとかねばならず忙しいのですが。
http://kamigata.fan.coocan.jp/kamigata/rakug160.htm
このサイトの末尾に「上方いろは歌留多」というのが掲載されており、ちょっと面白いかなと。「い」はふつう「犬も歩けば棒にあたる」ですが、上方では「石の上にも三年」です。商人の町らしい。
by リス太郎 (2020-06-30 00:04) 

リス太郎

五代目の『粗忽の使者』を聴いたけど音源が古すぎてよくわからん。で、柳亭市馬師匠のを聴いた。『粗忽の使者』と『月並み丁稚』はもとは同じかもしれないけど全く違う話です。オチは『粗忽の使者』のほうが秀逸。でも丁稚を出してくる『月並み』の設定は捨てがたい。ミックスして短くまとめてみますか。あとギャグが少ないからなんか考えよう。
by リス太郎 (2020-06-30 00:41) 

リス太郎

もともとの小咄に忠実なのは『粗忽の使者』でしょうね。伝言をきいて忘れてしまい、尻をつねれば思い出すというんでつねりまくったら思い出し、きくの忘れてたという。同じようなカラクリの笑いは吉本新喜劇にもあるし、たぶん狂言にもあると思う。
by リス太郎 (2020-06-30 00:48) 

リス太郎

ああ、もうできたわ。いまやる?時間ある?
by リス太郎 (2020-06-30 00:52) 

リス太郎

マルコメさんへ
南久宝寺かあ。なつかしいなあ。
京阪神で食べ歩きしてジャパライフの視聴率あげたい。
https://www.japalife.jp/
by リス太郎 (2020-06-30 00:58) 

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