創作落語　『トビオはＡＤＨＤ』：THE UNIVERSE...森羅万象：SSブログ

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創作落語　『トビオはＡＤＨＤ』　[大衆芸能] [編集]

えー、毎度バカバカしいお笑いを一席。
ＡＤＨＤの子どもが増えてまして。
注意欠陥・多動性障害と言うんだそうで。
そういえば私もかなり注意欠陥で多動性です。
たとえば爪を切りますでしょ。
切ってる最中に違うことに関心が移るんですな。
爪切ってたことを忘れちゃう。
しばらくして気づいてまた爪を切る。
次の日ぐらいになって中指を切り忘れてることに気づく。
落語のほうに出てくる連中ってのはそんな奴ばかりでして・・・

とある出版社が出した発達障害の子どもを題材にした漫画、『トビオはＡＤＨＤ』。
ぶっ飛んでるからトビオなんだかそれはどうだか知りません。
トビオという名前なんです。
ＡＤＨＤのトビオが巻き起こすハチャメチャな日常を漫画にしたんだそうで。

「もしもし、アボジ書店さん？」
「いえ、アガシ書店です」
「あら、ごめんなさい。『トビオはＡＤＨＤ』って本あります？」
「はい、先月刊行しておりますが」
「それね、１５０冊ほしいんだけど」
「１５０冊でございますか？」
「そう。在庫ありますか？」
「ございますが、採用品か何かでございましょうか？」
「いえ、大津の漁協様から注文が入ってましてね、『トビオはＡＤＨＤ』１５０冊。直送してもらえますか？」
（受話器を奪い取ったメイフェア）「はいっ！よろこんで！」

その頃、大津の漁協では・・・

「おい、中村。こないだ言うた本、注文したんか？」
「注文しましたで、『トビウオはＤＨＡ』。近江國屋に電話したらわかった言うとったし」
「ほれやったらええけど、お前はどっかたよんないさかいな。こないだも破れた網を直せ言うとんのにちっとも直さんと。直しました直しました言うて。自分の家の網戸直してどないすんねん。そんなもんは勝手にしたらええがな」
「いや、今回は間違いおまへん。近江國屋の店員から在庫ある言うて電話も来たし」
「ほんでいつ頃届くねん？」
「来週の火曜日には届く言うてますわ」
「そうか、それやったらええけどな。わしら漁協の命運がかかっとるプロジェクトやさかいな。トビウオにＤＨＡが豊富とわかった以上、これを琵琶湖で養殖せん手はないやろう。わしら大津の漁師はな、この琵琶湖の自然の恵みで生業を立ててきたんや。鮎にうなぎに鮒。それに湖魚と呼ばれる小魚の数々。それがどうや近年は。琵琶湖の水質汚染が深刻なんはわしら漁師にとって生活の危機や」
「会長のおっしゃること、ようわかります。そやからこそ新しいビジネスとして、何としてでもトビウオの養殖を成功させなあきまへん」
「ほんまにわかっとるんか、お前は。ほんでトビウオの稚魚の手配はどないなっとんねん？」
「それはもうばっちり。島根の漁協に言うてありまっさかい。もう今ごろ熊猫ヤマトが山陰道走ってますわ。稚魚の送り方についても So-net のブログで調べましたさかい」
「So-net のブログて何やねん？」
「ゆ～ひ言う人が稚魚の送り方を研究してまんねん。それ読んでそのとおりに送るよう言いましたさかい」
「なんかお前は信用しきれんなぁ。あとお前、関才テレビには電話したんか？」
「は？」
「は？やあらへん。関テレに電話せなあかんやろうが」
「ああ、『ないない大事典』のことでっか。いや、電話はしたんでっけどね、回線が混みあってますっちゅうてつながりよらんのですわ」
「とにかく時間帯変えるとかして何べんもかけてみい。トビウオにはＤＨＡが多いんやからなんとしてでも『ないない』で取り上げてもらわんと」

そして翌週の火曜日。

「会長、本、届きましたで」
「開けてみろ」
「はいはい、ただいま」
「１冊見せてみろ」
「はいはい」
「・・・・・」

「おい中村、この本、誤植があるな。トビウオの「ウ」が抜けとる」
「そうでっか？」
「ＡＤＨＤ・・・？ＤＨＡとちょっとちゃうな」
「そうでっか？」
「お前、この本の内容、よく確認したか？」
「え・・・？」
「まぁ、買うてもたもんしゃあない。みんなに配って読んでもらえ。しかしトビウオのような青背の魚にＤＨＡが豊富なんは間違いない。プロジェクトは遂行する。関テレに電話したか？」
「いえ・・・それがまだ・・・」

「お昼のニュースです。『ないない大事典』を制作した関才テレビは社長ら１０人の処分と番組の打ち切りを発表しました・・・」

2007-01-28 03:47 nice!(3) コメント(7) トラックバック(0)
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