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還暦を迎えた日本国憲法

本日(2007年5月3日)、日本国憲法は施行60年を迎えた。
日本経済新聞による世論調査によれば、「改憲に賛成」が51%らしい。
2000年4月には61%だったものが徐々に減ってきている。
媒体によって数字はさまざまだと思うが、政治的イデオロギーに左右されにくいという点で(そうとも言い切れないかもしれないが)、日経は比較的、実態に近いのではないかと思う。
51%しかいないのかと不満に思う御仁もあれば、そんなにいるのは冗談じゃないと思う人もいるだろう。
しかし今一度、よく考えてみる必要がある。
歴史に名を残したい(もう十分悪名を残しているが)だけの年寄りに、これ以上好き勝手は許さない。

朝日新聞の世論調査は日経のように単純ではない。
質問は日経とは比較にならないほど細かく、細部にわたっている。
「改憲に賛成」と言っても、それは単一な考えではないことがわかる。
憲法改正(本当は改悪だが)が必要と思う人は58%にも上っている。
しかし関連するいくつもの質問ではバラバラに別れ、安倍政権下での改正賛成は40%である。

朝日の読者でさえ40%もいる。
9条を変えたほうがいいという人も33%にも上る。
この国の住人はかなりヤキがまわっている。

日経の世論調査の結果である51%が実態に近いと仮定した場合、これはまだ非常に危険な状態から抜け出せていないということになる。
憲法改正は衆参両議院、それぞれ「総議員の」3分の2以上の賛成により発議される。
発議されればそれを国民に提案し、承認されねばならない。
その方法は国民投票により、過半数の賛成を必要とする。
これは憲法96条1項に定められている。

ただし、ここで大きな問題がある。
憲法にはただ「過半数」と書いてあるだけで、その分母は有権者総数なのか有効投票数なのかわからない。
こういった重要な決定をする場合、棄権は反対票とみなし、有権者総数を分母とすべきと私は思う。

しかし先日、衆議院を通過した自民党の国民投票法案では、有効投票数を分母としている。
また、最低投票率も定めないとしている。
少数意見を反映しようという気がまるでない。
民主主義の基本原則を履き違えている。

安倍政権は憲法改正をやけに急いでいるのだが、まだまだ議論が足らないと思う。
憲法を変えて政府が何をやろうとしているのか、ほとんどの国民は気づいていないからだ。

二大政党制を歓迎する向きもある。
しかし中曽根康弘は憲法改正にあたり、自民と民主の協力を呼びかけている。
総理大臣を長く務めた人が、議会制民主主義をまるで理解していない。
民主党代表代行の菅直人は「今は協力できない」としているものの、民主党という政党はいつ買収されるかわからない。
二大政党制などと言ったところで、今の民主党では自民党がふたつあるのとあまり変わらない。
こんな国で保守の二大政党など、国民は大迷惑である。

憲法改正における最大の争点は9条であろう。
集団的自衛権の行使を主張する人が多い。
「北朝鮮の飛ばしたミサイルが頭上を飛んでいくのを黙って見てるのか」といった幼稚な例えに代表される。
憲法が国際法より優位である以上、これを変えねばならないと思うらしい。

これに対する反論はすでに何度も書いてきたので割愛する。
保守派議員の中にも反対している人が多いので参考にしてほしい。

今日、私が言いたいのは、14条と24条についてである。
14条では法の下の平等を謳い、24条では両性の平等を謳っている。
これらが変えられようとされていることをほとんどの国民が知らない。

どちらも男女平等社会を実現するための基本理念なのだが、安倍は気に食わないらしい。
家父長制を復活させたい安倍には、頭にちょんまげを乗せてあげたい。
安倍はその著書の中で、片親や再婚家族、未入籍や子どものいない夫婦を侮辱する発言をしている。
百歩ゆずって改憲が必要であったとしても、そんな安倍の下で行われる改憲は絶対に許してはならない。

また安倍や中曽根は何かというと教育問題を持ち出す。
いじめなど教育をめぐる問題は、現憲法下における民主教育や家庭のあり方に原因があると思い込んでいる。
安倍や中曽根とその一派が言いたいことをわかりやすくまとめてみよう。

「現在の教育の荒廃は戦後の社会のあり方にあります。親や先生を敬い、国を愛する心を教えなければなりません。お父さんを中心としたちゃんとした家族というものが、豊かな社会を形成します。ひとりひとりが国民としての自覚をもち、国の危機には一丸となって立ち向かわなければなりません。国際社会の一員である以上、集団的自衛権は行使すべきであり、憲法で認められなければなりません」

中学生の作文みたいだが、まあ、こんなところか。
思考が浅く物事の表面しか見ていないことがよくわかると思う。


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コメント 7

めぎ

私は、51%もいるの?とびっくりしました。
前は60%以上だったことにも驚きました。
by めぎ (2007-05-04 07:55) 

通りすがりY

「最低投票率」は反対したい国民にとっては「反対票を投ずる」「拒否権を行使する (投票率が下がればいいからと言う理由により)」という二重の権利を得ることになる。
その一方賛成派したい国民にとっては、「賛成票を投じる」という一つの権利しか与えられない。

これは法の下の平等をうたう、現行日本国憲法第14条に明確に違反する行為です。憲法改正に反対の人が現行憲法に違反するような主張をしてもいいのですか?
by 通りすがりY (2007-05-04 22:36) 

リス太郎

めぎさんへ
「憲法は変えねばならない」というプロパガンダが浸透してるんです。大衆にわかりやすい論法で故意に誘導している。5月3日には各地でさまざまな催しがあったようです。新聞でしか読んでませんが、改憲派の人たちの言うことには客観性がありません。国民を欺くことしか考えてないので無理もありませんが。今の国際情勢と日本の置かれた立場、これからあるべき世界、そして日本。そういったものを具体的に示し、憲法が果たしている役割、不備な点、それらを総括して国民に情報として提供する必要があるでしょう。改憲、護憲、どちらに立つのでもない客観性のある情報を共有すること。まずそこからだと思います。
by リス太郎 (2007-05-05 07:01) 

リス太郎

通りすがりYさんへ
60年も施行されてきた法の中の法である憲法を改めるにあたり、単純に賛成票と反対票の割合で決めるのはどうかと思います。それはその発議が、衆参両議院において「総議員の3分の2以上の賛成」と規定されていることからもわかります。ちなみにこの場合、衆議院の優越は認められていません。それぐらい憲法を変えるというのは重大なことなのです。まずそれを理解してください。そして私は、どちらか決めかねている、あるいはわからないためにやむなく棄権する人の意見を尊重すべきだと考えます。有効投票数を分母とした場合、そういった人たちの意見が完全に無視されることになります。以上2つの理由により、最低投票率を定めることは法の下の平等に反しておりません。
by リス太郎 (2007-05-05 07:16) 

リス太郎

せーらーむふ~んさんへ
いらっしゃい。ナイスおおきに。
by リス太郎 (2007-05-05 07:24) 

リス太郎

まぐなすさんへ
はじめまして。ナイス有難うございます。
by リス太郎 (2007-05-05 07:25) 

リス太郎

yutakami 先生へ
ナイス有難うございます。
by リス太郎 (2007-05-06 00:21) 

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