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10月2日の商品説明会で取り上げた本のご紹介

10月2日の商品説明会で取り上げた本をご紹介したいと思います。
公共・学校図書館向けに選書しているのですが、いずれにしても私が「よい」と思った本しか選んでません。
実際に使ったレジュメをブログの読者用に手を入れました。
1冊でも読んでみたい本があれば嬉しいのですが。

① 『「平和憲法」を持つ三つの国』 パナマ・コスタリカ・日本
吉岡逸夫 著
本体価格 1,800円  ISBN 978-4-7503-2615-3
2007年9月刊行  四六判 並製  232ページ  明石書店 発行

憲法で軍隊の不保持を明言しているパナマとコスタリカを紹介。パパ(著者のジャーナリスト吉岡氏)と娘のフミの会話を通し、高校生にもわかりやすく解説する。パナマ・コスタリカの一般市民への取材をとおし、軍隊を持たずに安全保障を実現する方法について考える。3つの国のもうひとつは戦力の不保持を9条で謳っている日本。

実は軍隊を持たない国はアイスランド、ドミニカなど20カ国以上もある しかし憲法で軍隊の不保持を明言しているのはパナマ・コスタリカ・日本のみ 日本と同じくパナマ・コスタリカにも軍隊を持たないことへの国民の思いはさまざまであり、本書では偏りのない意見を紹介している

ひるがえって自衛隊を保持する日本は平和憲法をどうすべきか 集団的自衛権を認めるべきか(コスタリカは集団的自衛権を謳うリオ条約に加盟しているが海外派兵は拒否している) 軍隊を持たないパナマとコスタリカが安全を確保する手段とは 軍隊を放棄しても交戦権は認めている現実・・・

著者は海外協力隊や15年のカメラマン経験を持つ国際派ジャーナリスト パナマとコスタリカで拾った市民の生の声を娘に聞かせながら話はどんどん広がる 難しい言葉はフミがいちいちパパに聞くので基礎知識が不要 また、たとえば「フランチャイズ」や「マネーロンダリング」の説明をパパがする場面などもあり、大人だけでなく中高生の興味・関心を広げるのにも役立ちそう

② 『まんが「慰安婦」レポート1』 私は告発する
チョン・ギョンア 著  山下英愛 訳
本体価格 1,333円  ISBN 978-4-7503-2591-0
2007年7月刊行  B5版変型 並製  264ページ  明石書店 発行

2006年、韓国で話題となったルポ漫画。漫画家のチョン・ギョンアさんはイラク戦争がきっかけで戦争と女性をテーマに漫画を構想。「慰安婦」問題につき独自の取材を重ねた。「慰安婦」問題を日韓の民族問題としてではなく「戦時強姦」ととらえているのが特徴。加害者の悪辣さを強調し反日感情を煽ることもない。作者の人間愛を感じる作品である。

為政者に不都合な事実を教科書から消そうという動き 国際社会では自国の負の歴史を知っていることが必要 ナショナリズムから来る感情論ではなく戦時下における女性への暴力を憎む確かな目が感じられる・・・
それは冒頭にオランダ人元「慰安婦」を登場させていること、ボスニア内戦の強姦キャンプなどについても触れていること、今後刊行される2巻ではベトナム戦争における韓国人兵の性暴力についても取り上げていく予定であること、などなどからも、単に旧日本軍の行為のみを対象とした作品ではないと断言できる。残念ながら旧日本軍の行為はあまりに常軌を逸していたわけだが、そこから目をそむけないでほしい。被害者の痛みをわかってあげることが今の日本人には全くできていない。

「慰安婦」と括弧つきで書くのは当事者たちがそう呼ばれることに抵抗を感じているため。自分たちは慰安などしたつもりはなく性虐待の被害者であるとの思い。第1回アジア連帯会議では“military sexual slavery by Japan”(日本軍性奴隷)という表現が正式に採用された。

全3巻なのだが、2巻目以降はこれから韓国で発行される。明石書店より随時、翻訳出版予定。

③ 『特別支援教育』 特別なニーズをもつ子どもたちのために
ウィリアム・L・ヒューワード 著  中野良顕、小野次朗、榊原洋一 訳
本体価格 15,000円  ISBN 978-4-7503-2577-4
2007年6月刊行  B5判 上製  840ページ  明石書店 発行

2006年に可決・成立し公布された「学校教育法等の一部を改正する法律案」。2007年4月からは特別支援教育が正式に実施されている。従来の特殊教育との大きな違いは発達障害児をその対象とすること。学童の16人にひとりが発達障害と言われる今日、公共・学校図書館に必備の1冊。

原書名は“EXCEPTIONAL CHILDLEN ; AN INTRODUCTION TO SPECIAL EDUCATION”(2003年/第7版/アメリカ)。

④ 『世界を不幸にする原爆カード』 ヒロシマ・ナガサキが歴史を変えた
金子敦郎 著
本体価格 1,800円  ISBN 978-4-7503-2557-6
2007年7月刊行  四六判 上製  352ページ  明石書店 発行

著者は元共同通信国際部記者。アメリカ政府の内部文書を掘り起こし、広島・長崎への原爆投下の舞台裏を暴く。軍事的には必要のなかった原爆をなぜ2発も使用したのか。ルーズベルト、バーンズ、トルーマンという3人の指導者にその謎を求める。

対ソ外交を有利にすすめたかったアメリカ 今もアメリカでは原爆は歴史問題ではなく政治問題(1995年に中止されたスミソニアン航空宇宙博物館の原爆展示) 「原爆カード」は「核カード」となって現在も使用し続けられている 「しょうがなかった」では済まされない理由について考えたい

新聞各紙に書評が掲載されている力作です。

⑤ 『日韓歴史共通教材 日韓交流の歴史』 先史から現代まで
歴史教育研究会(日本) 歴史教科書研究会(韓国) 編
本体価格 2,800円  ISBN 978-4-7503-2483-8
2007年3月刊行  A5判 並製  464ページ  明石書店 発行

通史としては初めての日韓歴史共通教材。東京学芸大学とソウル市立大学校を中心とした研究者・教員が15回のシンポジウムを経て10年がかりで仕上げた労作。3月の刊行以来、東京新聞、朝日新聞、毎日新聞などにニュースとして大きく取り上げられた。学生向けの記述で写真・地図なども多数掲載。

歴史を一国単体でとらえるのではなく、周辺国との関係を通じて理解し共通認識を持つことの重要性 ドイツやフランスで進んでいる歴史認識の共有作業 金子文子(234p他)柳宗悦(242p他)吉野作造(208p他)浅川巧(252p)ら朝鮮の立場に立って生きた日本の民間人・学者にもページをさく 東学農民運動の全捧準(チョン・ボンジュン/245p他)、独立運動家の申采浩(シン・チェホ/246p他)ら日本人に馴染みの薄い朝鮮人も数多く登場

⑥ 『アース・デモクラシー』 地球と生命の多様性に根ざした民主主義
ヴァンダナ・シヴァ 著  山本規雄 訳
本体価格 3,000円  ISBN 978-4-7503-2581-1
2007年7月刊行  四六判 上製  364ページ  明石書店 発行

インドの環境運動家、ヴァンダナ・シヴァによる2005年の著作(アメリカにて)の翻訳。シヴァ思想の集大成にして入門書。企業グローバリズムが地球を破壊すると警告するシヴァ氏。2000年に発表された『食糧テロリズム』(2006年明石書店にて翻訳出版)では具体的な話が中心であったが、本書では現実の話を踏まえた上での思想書的な性格が強い。ひとりひとりが行動を起こすことを呼びかけている。

核戦争より先に起こるのは食糧戦争であり、更に先に起こるのは水をめぐる戦争と言われている バイオ燃料としてトウモロコシがエネルギー利用され穀物の受給バランスが大きく崩れている 企業の活動が第三世界の農民を自殺にまで追い込んでいる実状についてもっと知ってほしい もっと関心をもってほしい

⑦ 『川田龍平いのちを語る』
川田龍平 著  志波玲 写真
本体価格 1,400円  ISBN 978-4-7503-2563-7
2007年6月刊行  A5判 並製  120ページ  明石書店 発行

7月の参院選で当選した川田龍平氏が「いのち」の大切さを語る。実名にて薬害エイズを公表し、3500人が厚生省を取り囲んだ1995年夏から12年。薬害エイズ裁判の渦中に生まれ育った子どもたちへの講演録や弁護士・運動家らとの対談。そして最終章では世界社会フォーラム参加などのため訪れたアフリカでの話。カラー写真がふんだんにあり、文章にも川田氏らしい素朴さが感じられる。

サリドマイド薬害や薬害ヤコブ病など薬害被害はいっこうになくならない 「人権」という硬い言葉を川田氏は「いのち」と表現している いじめや差別・偏見をなくすのは「いのち」を尊重する心

⑧ OECD刊行物翻訳書 (新刊おすすめ3点 ほか多数)
経済協力開発機構(OECD) 編著

『世界の労働市場改革 OECD新雇用戦略』
雇用の拡大と質の向上、所得の増大をめざして
本体価格 5,000円  ISBN 978-4-7503-2569-9
2007年6月刊行  B5版 並製 336ページ  樋口美雄 監訳  明石書店 発行

『図表でみる世界の主要統計 OECDファクトブック(2006年版)』
経済、環境、社会に関する統計資料
本体価格 6,800円  ISBN 978-4-7503-2484-5
2007年2月刊行  B5版 並製 272ページ  ㈱テクノ 訳・発行  明石書店 発行

『図表でみる世界の社会問題 OECD社会政策指標』
貧困・不平等・社会的排除の国際比較
本体価格 2,500円  ISBN 978-4-7503-2474-6
2006年12月刊行  B5版 並製 116ページ  高木郁朗 監訳  明石書店 発行

OECDの刊行物の翻訳出版に力を入れています。膨大な文献を全て原書で読むのは大変ということで、研究者の方を中心にご好評いただいております。明石書店ではすでに約40点の翻訳書を刊行しております。他社から出されているものもあるので、最寄りの書店や図書館でお問い合わせ下さい。

⑨ 『外国人研修生 時給300円の労働者』 壊れる人権と労働基準
外国人研修生問題ネットワーク 編
本体価格 1,600円  ISBN 978-4-7503-2359-6
2006年7月刊行  A5判 並製  176ページ  明石書店 発行

途上国の若者に日本の技術を習得さすのが目的だったはずの外国人研修・技能実習制度。しかし多くの企業はこの制度を悪用し、法定最低賃金を無視して酷使している。また協同組合やコーディネート企業によるピンハネも横行。パスポートや預金通帳の取り上げといった違法行為のみならず、はなはだしきは暴行にレイプ。「トイレ1分15円」といった事例まで明らかになっている。

日本の経済産業にとって外国人労働者は必要不可欠となっている。しかし日本は外国人単純労働者の受け入れを認めていない。その隙間を埋めているのがオーバーステイの不法滞在者であり、また、外国人研修生・実習生たちである。労働者としての権利はおろか、基本的人権まで無視した状態で放置してよいのか。都市部でも農村部でも外国人が多く生活する現在の日本において、彼ら彼女らの生活の実態をもっと知ってほしい。

                                   2007年10月2日


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