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クルド人家族に在留特別許可を [外国人労働者問題]

トルコ国籍のクルド人の夫とフィリピン国籍の妻ら一家が強制退去処分の取消を求めた訴訟。
東京高裁は解決に向け、国、家族双方が話し合うよう訴訟指揮をとった。
一家の代理人の大橋毅弁護士は「在留をめぐる訴訟で裁判所が協議を促すのは極めてまれ。事実上の和解勧告」と話す。
在留特別許可が下りることを期待したい。

一家は埼玉県在住の夫タスクンさん(32)と妻ベルトランさん(41)、日本で生まれた長女ジランちゃん(6)。
長女は日本語しか話せない。

以下は2008年1月1日付け日本経済新聞記事よりの抜粋。

 タスクンさんは1993年、ベルトランさんは96年に来日し、後に結婚。タスクンさんがトルコで迫害を受けているクルド人であることから、難民認定を申請したが認められず04年1月、強制退去処分が出た。
 在留を求めた訴訟も一審は「送還後、夫婦どちらかの国に移って暮らすことも困難ではない」として敗訴。「イスラム教徒の夫が、カトリック信仰の厚い妻の母国で生活できるはずがない」。一家は悲嘆に暮れた。
 さらに最近、トルコ・イラク国境付近で、トルコ軍とクルド人武装組織との戦闘が頻発。タスクンさんは「送還されればトルコ軍に入れられ、仲間のクルド人と殺し合うことになるのではないか」と表情を曇らせる。
 ベルトランさんは「幸せな家族になれたのに、離れ離れになるのは信じられない。願いは一つだけ。在留が認められるよう話し合いがうまくいってほしい」と願っている。

東京高裁が協議を指示したことで、在留特別許可への期待が膨らむ。

在留特別許可は入管法第50条で定められた規定。
退去強制の対象者であっても、「法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」に合法的な在留資格が付与される。
ただし、時の法務大臣の自由裁量という気まぐれな制度である。

日本に非正規滞在の外国人はどれくらいいるのか。
法務省入国管理局の2006年の調査では「不法滞在外国人は22万人」と推計されている。

(日本の行政やマスコミは「不法滞在者(illegal residents)」という呼び方をしたがる。しかしこの呼び方は、移民を一方的に犯罪者と決め付けかねない弊害がある。国連や西欧諸国の機関では「非正規滞在者(irregular residents)」と呼ぶのが通例となっている)

全世界の非正規滞在者は3000万から4000万人と言われており、日本の22万人はそのごく一部である。
非正規滞在者を「正規化」する手段として、大きく2つの方法がある。
ひとつは在留特別許可であり、もうひとつは一般アムネスティと呼ばれる方法である。

一般アムネスティとは一定条件を満たす非正規滞在者を短期間に大量に許可する方法。
諸外国では積極的に採用されており、例えばアメリカの場合、1987-88年に270万人、1997-98年に41万人を許可している。
ただし、日本では否定的意見が強く、現時点では実現は難しいと考えざるをえない。
そこで注目すべきなのが在留特別許可である。

一定の条件、つまり退去強制となった場合の生活の困難が明確である場合、すみやかに在留特別許可が下りるよう法整備をお願いしたい。
誰もが客観的にわかり不公平のない制度であることも必要である。

問題は在留特別許可が退去強制手続の一環であり、「お願い条件」であることだ。
「お代官様」にすがりつく構図はなんとかならないものか。

従来の日本政府の立場は、専門的・技術的労働者は歓迎するが、単純労働者は入国を認めないという方針だった。
それが2000年以降、「特定技能労働者」という言葉を使い、かつての単純労働者の一部を認める政策が推し進められている。
インドネシアとの経済連携協定(EPA)による看護士受け入れもその一環だ。
日本社会は外国人労働者を大量に受け入れなければ成り立たなくなっている。

看護や介護といった人の命を預かる職場が人手不足。
それは日本に暮らす人たちにとって大きな不安材料である。
しかし今すでにこの国で働いている人たちを非正規滞在だからと排除していいのだろうか。
大きな歯車であれ小さな歯車であれ、家族や仲間とかみ合って回る権利は等しいのではないだろうか。

(参考図書: 『在留特別許可と日本の移民政策』 渡戸一郎 鈴木江理子 A.P.F.S. 編著)


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リス太郎

temori さんへ
ナイス有難うございます。忙しいのに頻繁に来ていただいて恐縮です。
by リス太郎 (2008-01-05 22:15) 

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