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第1回外国人研修生全国フォーラム2008 [外国人労働者問題]

3月8日(土)と9日(日)、第1回外国人研修生全国フォーラム2008が明治大学駿河台キャンパス・アカデミーコモンで開催された。
主催は外国人研修生権利ネットワーク、共催は移住労働者と連帯する全国ネットワーク。
私の勤める出版社は協賛しており、9日の日曜日に分科会を聴きに行った。
8日はのっぴきならない用事で参加できなかったので。

分科会は午前9時に始まるのだが、目が覚めたら8時をまわっていた。
9時ジャストに会場に到着。
書籍販売の担当に声をかけ受付へ。
協賛してるので無料で入れるのだが、参加費を個人的にカンパする。
分科会は前日からの続きとなっており、

①事例報告―傾向と対策
②研修生と裁判(刑事・民事)
③政策と提言              の3つ。

②を聴くつもりだったが、直感的に①を聴くことにした。
研修生・実習生の生の声を聴けると思ったからだ。
通訳の甄凱さんが遅刻してくれたおかげで最初から参加できた。

8日には釜山外国人労働者人権協会代表の鄭貴順(チョン・キスン)さんの基調講演があった。
韓国では2007年1月1日に産業研修制度が廃止され、雇用許可制に統合施行された。
レポートをもらったので、これについてはまた折を見て紹介したい。

外国人研修・技能実習制度について、これまでの推移を簡単にまとめてみた。

・外国人研修制度は1950年代後半に始まり、1960年代後半より活発化した。当時は企業単独型の受入れであり、現地法人の従業員育成がその目的。企業単独型は現在も大企業を中心に行われており、不正行為の事例は少ない。ただし企業単独型は全体の約1割にすぎず、問題は残りの9割を占める団体監理型受入れにある。また下請け企業の不正を見ぬふりをして許容している大企業の責任を見逃してはならない。

・1981年に留学生の枝分かれとして在留資格が定められる。1990年の入管法改正では「研修」という独立した在留資格となる。現在も在留資格「研修」は留学や就学と同様、就労不可である。現在、外国人労働者は不法就労も含め約80万人と言われるが、「研修生」(約9万人)は数に入っていない。報酬を受ける行為は禁止されており、生活費としての手当が支給される。労働法規の適用もない。雇用者はそれをいいことに不利な条件で働かす。残業も禁止だが現実には夜遅くまで働く。就労不可なのに残業禁止という矛盾。

・1990年、団体監理型受入れが新設される。中小企業の研修生受入れが可能となる。受入れ人数は後に緩和され、50人以下の従業員の企業に対し一律年間3人の受入れが可能となる。これは後に技能実習制度が新設され、上限が2年に引き上げられたとき、どんな小さな企業でも常時9人を雇えるという状況を生むこととなる。

・1991年、法務、外務、通産(現・経済産業)、労働(現・厚生労働)、建設(現・国土交通)の5省共管財団法人として、国際研修協力機構(JITCO)が設立される。研修制度の適切な運営と支援がその目的。であるはずだが、研修制度に群がるブローカーを野放しにし、利権を食い物にする天下り役人の集まり。

・1992年、実務研修を2/3以下に抑える規定が4/5以下に緩和される。研修には実務研修と非実務研修がある。実務を学ぶOJT(実際は単純労働)と、仕事に役立つ知識や日本語などを勉強する座学。雇用者はできれば座学はやらせたくない。時間が惜しいのもあるが、教室を確保したり講師を招いたりする余裕がない。90年代前半に私が見聞きした事例では、日本語講習会は土曜日の午前中のみ。それも講師の都合やらなんやらでしょっちゅう中止になる。「そんなんでしゃべれるようになるんか」と聞くと、「俺たちは稼ぎに来たんだ」と言っていた。ちなみに日本語講習以外の「お勉強」はあったのかもしれないが、私は聞いたことがない。

・1993年、技能実習制度創設。1年の研修を受け、入管やJITCO(ジツコと呼ばれる)から認められた者が技能実習生となる。在留資格は「特定活動」。これはワーキングホリデーなどと同じ枠組みであり、労働法規が適用される。つまり労働者として扱ってもらえるようになる。最低賃金も守らねばならないが、実際には家賃の他に流し台のリース代などを天引きし、研修生のころとあまり変わらない給料で働かされるケースが多い。受入れ企業は協同組合(第一次受入れ機関。商工会議所や事業協同組合など)に管理費を払うため、その捻出のため人件費を削る。不正な人件費削減の手段は協同組合から管理を請け負うコーディネート企業などが指図。送出し国の機関とグルになって研修生を搾取している構図。中国からの研修生が過半数だから言うのだが、「日中合作のピンハネ事業」である。(中国政府としての最大のメリットは外貨獲得だったはずだが、今はもう関係ないように思われる)

・1997年、技能実習期間が1年から2年に延長される。このころから研修生・実習生をめぐる不正・不法行為が少しずつ明らかになる。1998年の銚子事件(「全国生鮮食品ロジスティックス協同組合」によるピンハネ)では協同組合の責任者が刑事責任を追及された。2000年代になり、賃金の問題だけでなく数々の酷い事例が報告されるようになる。パスポートや預金通帳の取上げ、受入れ先が違う、あるいは飛ばす(人身売買)、暴行、監禁、セクハラに強姦。不満を言うと「国へ送り返すぞ」と脅す(脅迫)。無免許で、あるいはろくに操作を教えもせず、危険な機械を操作させ、体の一部を失くした実習生もひとりやふたりではない。適用できるはずの労災も申請しようとしない。なぜそんなことになるのか。外国人を人間と思っていないからできる。

・2006年6月、栃木県西方町で、警察官が中国人研修生に発砲し死なせてしまう。国家賠償請求を求め裁判継続中。栃木県警は事実を捻じ曲げ正当防衛を主張。

・2006年8月、千葉県木更津市で、強制送還を恐れた中国人研修生が農業協会の常務理事を刺殺。研修途中で強制的に送り返されることは巨額の借金を残すことになり、彼ら彼女らが一番恐れていること。2007年、懲役17年確定。控訴せず。

・2007年6月、アメリカ国務省が世界の人身売買の実態に関する報告の中で日本の研修・技能実習制度について言及。

・2007年12月、法務省は受け入れ機関などに示す指針を初めて改定。いままで具体的に定めていなかった「不正行為」を理解しやすいものにしたという。パスポートは取上げちゃダメだとか、賃金はちゃんと払わなきゃダメだとか書いてある。幼稚園の規則みたいだが。

さて、簡単にまとめるつもりがずいぶん書いてしまった。
外国人の問題というのは日本人が立ち上がらないと解決しない。
いつまでもこの問題に無関心を装う日本人を軽蔑する。

そして外国人を食いものにする悪徳業者は日本人にも牙を剥いている。
彼らにとって搾取する相手の国籍などどうでもいい。
たがの外れた資本主義というのは社会主義より始末が悪い。
「日本に格差はない」などと寝ぼけているうち、取り返しのつかない状態になっている。

さて、外国人研修生ネットワークの政策提言を全文紹介するつもりだったが、次回にしたい。
しばらく硬派なテーマが続くと思うが宜しくお付き合い願いたい。

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