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移住連フォーラム分科会「研修生・実習生」報告 [外国人労働者問題]

昨日(6月14日)午後、川崎市教育文化会館で「移住労働者と連帯する(移住連)全国フォーラム・かながわ2008」が開催された。
今日もやっているが、都合により初日だけ参加した。
いくつもの分科会に分かれるのだが、私は「研修生・実習生」を選んだ。

厚生労働省が検討している外国人研修・技能実習制度の見直し案が明らかになった。
仲介業者排除のため受け入れ団体を許可制にする。
実習の実効性を確保するため一企業内の実習生の比率も規制する。
法務省と調整の上、出入国管理法などの改正案を来年の通常国会に提出する方針。
(6月13日付け日本経済新聞より)

同じく6月13日付け日本経済新聞より。
自民党の外国人材交流推進議員連盟(中川秀直会長)は12日、人口減の中で経済成長を確保するための「移民立国」の政策提言をまとめた。
今後50年間で総人口の10%程度(一千万人)の移民受入れを目標とする。
来週にも福田首相に提言し党国家戦略本部で具体策を詰める方針。

日本経済新聞は研修・技能実習問題、ひいては移民問題についてよく取り上げている。
中小企業の経営者にとって死活問題だから当然である。
違法・不当な行為、人権問題にも言及しており、偏りの少ない記事の書き方だと評価する。
(移民問題に対する日経の論調には気になる部分もある)

この日の日経は技能実習生の国籍別比率を円グラフで表している。
中国が圧倒的に多く84.9%。
ベトナム5.4、インドネシア4.7、フィリピン3.6、タイ0.8と続く。

都会に住んでいると多くの外国人を目にする。
でも、研修生や技能実習生と会うことはまずない。
彼ら彼女らは地方の工場や農場などで働いており、住居も職場の敷地内にあるケースが多い上、外出を禁じられていることも少なくない。
携帯電話やパスポート、預金通帳も没収される。

外国人研修生権利ネットワークの川上園子氏の報告によると、アメリカ国務省の「人身売買の見分け方」に照らし、日本における研修生・実習生の実態は「人身売買」に該当する。

・職場から自由に外出できるか
・身体的、精神的な虐待を受けていないか
・パスポートまたは身分証明書を本人が所持しているか
・どのような報酬や雇用条件で雇われているか、報酬は実際に支払われているか
・自宅に住んでいるか、職場の中またはその近くに住んでいるか
・本人や家族が脅迫されたことがあるか
・本人がその仕事をやめた場合、本人や家族に害が及ぶことを恐れているか

ひとつでも該当すれば問題だが、多くの研修生・実習生が全てに該当することも事実である。
研修生・実習生にとって一番恐ろしいことは「強制送還」である。
雇用者はこれをちらつかせ、違法・不当な行為にも従わせる。

私は若いころ、縫製工場の社長さん相手の営業をしていた。
研修生や実習生たちと一緒にシャツ一枚になって肉体労働にも従事した。
だから人とは違う視点からものを見れるし、頭でっかちではない議論ができる。
受け入れ企業の違法・不当な行為は許されないが、違法な低賃金で外国人を雇わなければ会社を存続できない。

以前、ある集会で、ジャーナリストの莫邦富氏は研修・実習制度をこのように表現していた。
「産業構造の転換を無視した延命措置」。
違法な賃金で人を働かさねば生き延びられない企業はつぶれてもらうしかない。

今、私たちの身の回りは安い中国製品であふれている。
中国製品がなぜ安いかというと人件費が安いことが主たる理由である。
じゃあ中国人を日本へ連れてきて安い給料で働かそうというのが経営者の考え。
もちろん入れ知恵してる奴がいて仲介料をとる。

私は研修・技能実習制度をなくすべきだと考えている。
労働者としての移民受け入れ体制を早急に準備しなければならない。
公平な制度で移民を受け入れ、彼ら彼女らが正当な賃金で働けることを国が保障しなければならない。
日本人と同じ権利が守られ、日本で安心して暮らし、子どもを育てられる環境を整備する。

理想ばかり言っているように聞こえるかもしれないが、かなり早い時期にそうなるのは間違いない。
日本人の意識が変わる必要がある。
外国人を雇わないとつぶれる会社はいずれつぶれる。
まさしく延命措置である。

違法な賃金で働かすにはちょっとしたテクニックがいる。
給与明細は法定最低賃金すれすれにして、寮費や光熱費などで回収する。
そういったことがまかり通らないよう労働基準監督署には目を光らせてもらう必要がある。

外国人研修生問題ネットワーク福井の高原一郎氏は報告する。
外国人脱退一時金制度を悪用したピンハネ。(外国人脱退一時金制度とは年金保険に6ヶ月以上加入した外国人が帰国後2年以内に請求すれば一時金が支給される制度。日中間には社会保障協定が発効されておらず、年金加入期間の通算措置もない)
実習生への給与を「別居手当」と称した残業代搾取。(別居手当が割増料金の基礎に算入されないことを悪用)
今、手元に給与支払明細書のコピーがあるが、寮費が毎月違う。
残業が多い月は家賃を多く差し引き、基本給が少ない(仕事がない)ときは家賃を基本給に充当するらしい。

一枚の写真をみた。
コンテナが写っている。
これが寮。
家賃が月2万円。
6人入れるから12万円を「回収」できる。

崩れかけた家屋。
雪の重みでこうなるらしい。
中はゴミだめそのもの。
管理もされていないあばら家を住居としてあてがい金をとる。

私は90年代に研修生らの寮をよく訪問した。
病院の寮だった建物を利用する場合もあれば、空き家を利用した寮もあった。
粗末で寒かったが人間の住むところだった。
高原氏が見せる写真は人間の住むところではない。

実習生への暴行事件の実態についても報告された。
女性の実習生に対し男性社員が顔面を殴打。
倒れたところを足蹴にされ30分ほど気を失った。
病院へ連れて行ってくれと頼んだが聞き入れられず、終業後に同じ実習生の仲間が病院へ連れて行った。

私が興味をもったのは暴行を働いた男性のこと。
高原氏によると華奢で弱々しく、人に暴力をふるうような人に見えないという。
その会社ではそういった暴力行為は日常茶飯事だったらしく、彼は上司の真似をしたんだろうかと。
人間は誰しもそういう弱い部分がある。

戸田事務所とサンワーク協同組合、小林縫製をめぐる研修生の飛ばしと偽装パスポートの実態は悪質きわまりない。
入管法違反であり偽装請負でもある。(高原氏は「偽装派遣」と言っておられたが、「偽装派遣」と「偽装請負」は同じ意味である)
研修・実習制度に群がる組織化された犯罪は巧妙化している。

高原氏の報告は内容が多すぎて全て紹介できない。

県央ユニオンの長谷川実氏からは、「首都圏の縫製業でも時給350円」と題した報告があった。
オンワード樫山にも卸している従業員56名(関連会社含む)の会社。
中国江蘇省南通市に従業員400名の合弁工場があるらしい。
研修生の間は全員、浜松の研修所に入るらしく、そこでの生活指南に日中両国語でこうある。

「調査員が来たら『まとめは寮でやってない』と言うこと」。
「まとめ」とは縫いあがった衣服から出た糸を和バサミで切ってきれいにする仕事。
楽そうに聞こえるかもしれないが、量をこなさないとなんぼにもならない仕事なのできつい。
これを寮でやらせて出来高払いしている。
ちなみに研修生に残業さすのは違法。

RINKの早崎直美氏は大阪からの報告。
研修・実習生といえば縫製業を連想するのだが、最近は変化が見られる。
2005年のJITCO支援の研修生業種別割合を見ると、衣服・繊維製品が27%、機械が20%、食料品が15%、農業と建設がそれぞれ7%で、金属が6%、プラスチックが4%となっている。
そんな中、早崎氏は「とび職の研修・実習生が増えている」と報告する。

A社に足場を貸し出すB社がある。
B社は外国人研修・実習生を受け入れA社に派遣する。(建設業務は派遣事業禁止業務であり偽装請負に該当する)
A社では研修・実習生に高所での危険業務をさせ、日給6千円ほどを支払う。(ご存知のとおり通常のとび職の給料はかなり高い)

早崎氏が関わったケースでは、B社は入管受け入れ停止処分となり、解決金が支払われたという。

私の義弟が大阪で土建業を営んでいる。
10年ほど前は韓国人の労働者が多く、彼らとコミュニケーションするため、韓国語を教えてくれと言われたことがある。
私の韓国語などカタコトもいいところなのだが、彼にとってはそれで十分だったようだ。
今、関西の建設現場はどうなっているのか、今度会ったら聞いてみたいと思う。

さて、今回の分科会には弁護士の指宿昭一氏も駆けつけられた。
指宿氏らは6月に研修生弁護士連絡会を立ち上げた。
指宿氏の提言は大きく次の3点。

・保証金制度をなくすこと
・中国で成立した労働契約法(労働合同法)をたてに中国内での違法契約を阻止
・強制帰国をなくすこと

日中両国で取り組まねばならない問題であることがよくわかる。

先日は長野県駒ヶ根市へ行ったのだが、中国人が多かった。
朝、ホテルで食事をしていると中国語が聞こえてくる。
「○○さんはどうしたの?」
「朝6時前に工場へ行ったよ。食事もせずに」

夜、どこかでメシを食おうとホテルの近辺を歩いていると、あっちからもこっちからも中国語が聞こえる。
駒ヶ根の人は彼ら彼女らのことを「派遣さん」と呼んでいるらしい。

去年は同じ長野県佐久市へ行ったが、ここにも中国人は多かった。
ただ、佐久と違い駒ヶ根にはラウンジみたいなものはほとんど見当たらない。
歩いている中国人も見るからに素朴な感じでホステスには見えない。

佐久のホテルでも朝の食堂で中国人女性の集団に会った。
スタイルがいいのでスポーツの交流か何かかと思ったが違うようだった。
若い兄ちゃんに連れられてどこかへ向かって行った。

夕食を食堂でとろうとすると今朝の女性たちがいた。
近くのテーブルに座ってみた。
ひとりの女性が腰が痛いとぼやいていた。
他の女性たちは比較的元気で、まだ日本へ来て間がないんだろうと思った。

ホテルで食事のとれる「派遣さん」は恵まれている。
しかし彼女たちの笑顔がいつまで続くのだろうとも思う。

私たちの目に触れるのはごく一部の恵まれた人たちである。
今日も日本中で研修・実習生は残業し、日本の産業を底辺から支えている。
中川秀直氏の連盟は例外として、政府の方針は「外国人を定着させない」ことに腐心している。
そして今日も、日本に幻滅した外国人が故郷へと帰っていく。

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