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「ブラジル人学校 子供が4割減る」 その報道、それだけで終わっていいのか

今朝(3月29日)の日本経済新聞社会面に小さな記事がある。
ブラジル人学校に通う子どもが2ヶ月で4割減ったらしい。(文科省調査)
ブラジル人学校の児童は約1万人と言われているので約4千人に相当する。
景気悪化で解雇された日系ブラジル人が、帰国したり路頭に迷ったりしている。

調査は全国のブラジル人学校86校を対象に実施、58校が回答。
2008年12月1日から2009年2月2日までの在籍者数の変化は以下のとおり。

5歳以下 平均55%減
6-14歳 平均37%減
15-17歳 平均21%減

全体で39%減

来なくなった理由
「帰国」 42%
「自宅・不就学」 35%
「不明」 11%

記事では3人に1人が不就学になったと伝えているが、「帰国」の42%以外は不就学と考えていい。
家計を助けるため働いているか、親が学費を払えなくなって路上生活している。

派遣切りで仕事を失った日系人の帰国が増えている。
帰る当てと金がある人はまだましで、家賃が払えなくなって困っている人が多いと思う。

日本に暮らす学齢期の外国人児童が約17万人。
在留外国人のうちブラジル人は約15%なので17万人にかけてみる。
荒っぽい計算で申し訳ないが、日本に住むブラジル人の子どもは2万5千人ぐらいいると考えられる。
公立学校に通うブラジル人を7千人と推測すれば、1万人近いブラジル人の子どもが不就学状態にあると考えうる。

一般的な日本人が通う学校を「一条校」という。
学校教育法1条に規定があるためこう呼ぶ。
外国人学校で一条校と認定されているのは韓国学校の3校だけである。
学習指導要領への準拠などが求められる。

インターナショナルスクールや朝鮮学校、中華学校などは「各種学校」として扱われる。
自動車学校や予備校と同じである。(自動車学校やで。どない思う?)

それでも各種学校に認められれば公的補助を受けられる可能性がある。
(一条校と同じようにはいかない。本来、同じであるべきだが)
次に挙げる「未認可」に比べればずっといい。

未認可の外国人学校は113校あり、外国人学校全体の51.1%を占める。
そのほとんどがブラジル人学校である。
志しをもって教育をしても自動車学校以下らしい。
(自動車学校がいけないと言っているのではない。違うやろということ)

ブラジル人学校に各種学校の許可が下りないのは経営基盤に起因する。
校地・校舎の自己所有と一定額の自己資金保有が義務付けられているためだ。
ブラジル人学校は歴史が浅く支援者も少ないためこのハードルは高い。

ただ、各種学校の認可権は都道府県の首長にあり、静岡、長野、愛知、岐阜の各県では一部緩和されている。
「せめて各種学校に」というのが多くのブラジル人学校関係者の願いではないだろうか。
土地の使用料や教具の割引率でも不利な立場に置かれるばかりか、子どもたちは通学定期割引も受けられないのだから。

あと、これはほとんどの各種学校でも同じなのだが、私立学校にある寄付金に対する税制優遇措置が適用されないこと。
これはもう弱いものいじめとしか思えない。
縁日でヤクザが徴収するショバ代とどう違うのか教えてほしい。

根本的な話をしたい。
ブラジル人であれ日本人であれ、この国で義務教育が受けられない子どもが一人でもいることはあってはならない。

憲法26条は無償の義務教育を保障しており、外国人の子どもにも適用される。
「権利の性質上日本国民のみを対象とする」とは認められないから。
未就学児童を放置することは憲法に違反している。
(憲法は私たち主権者が国に対して約束させるもの・・・
そう考えると昨今の9条改悪論議がいかに的外れかわかると思う)

今年1月30日に行われた塩谷文科相の会見概要を添付したい。
公立学校に移らなくても個人支援は可能だと言っている。

http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1245139.htm

今すぐやっていただきたい。

          ■

【参考図書】
『外国人学校』  朴三石 著  中央公論新社(中公新書1970)
『日本の中の外国人学校』  月刊「イオ」編集部 編  明石書店

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リス太郎

今日から日経夕刊で「日本ブラジル共存の街 豊田・保見団地に住んでみる」というレポートの連載が始まりました。
by リス太郎 (2009-04-02 23:40) 

ゆゆ

関係ないかもしれないけど、
今の公立の学校は貧乏だよ。
僻地の小学校だからかも知れないけど。
私の時代は各教室に電気鉛筆削りや、黒板消しを掃除する電動の機械とかあったけど、今は鉛筆削りひとつも買えないんだよ。
手回しの昔ながらのが壊れたまんまおいてあった・・・。
図書室の本も新しい本が滅多に買えないんだって。
公的補助があるって、一体何に使っているのかな~?
と、疑問に思った。
by ゆゆ (2009-04-05 10:33) 

yutakami

文部科学省の憲法違反、行政不作為。
誰かが訴訟を起こしますか?
by yutakami (2009-04-19 16:23) 

NO NAME

そもそもなんで日本に子供連れてくるんでしょう?

日本語ができなければ公教育からはじかれることも
ましてやポルトガル語による授業なんて受けられるはずもない
ことはわかりそうなものですが。

日本人だって一家そろって海外に移住する場合は
「向こうの政府が何とかしてくれる」なんて思わないでしょう。
努力してその国の言葉を覚えさせるか、それができなければ
日本に帰国させ親戚に預けるかするのが普通だと思います。

不安定な職種なんだから授業料の高いブラジル人学校に
入れるより、子供をブラジルに残して仕送りした方が
理にかなってると思うんですけどね。
もちろん家族みんなで暮らしたいという思いは理解しますが
コストパフォーマンス的にそこまで支援してでも外国人労働力に
来てもらう価値があるのでしょうか?私はそうは思いません。
by NO NAME (2009-04-25 22:37) 

リス太郎

ゆゆちゃんへ
今、関西の外商書店に学校巡回の新規開拓営業やってんだけど、公立学校は予算を削られて出入りの業者は大変らしい。大阪市は今年1月から完全入札になったとかで、鉛筆1本たりとて入札しないと買えないらしい。図書の購入費用も思い切り削られてて、「巡回なんかやめときやめとき」とか言われる始末。もちろんそう簡単に引き下がらんけどね。
国は読解力向上とかって読書を奨励してるけど(新学習指導要領にも盛り込まれてる)地方はそれどころじゃない。三位一体の改革とやらをもっと抜本的にやらんとあかんのやろね。
by リス太郎 (2009-05-02 13:42) 

リス太郎

yutakami さんへ
お久しぶりです。学習の成果を試すかのようなコメントを有難うございます。
まじめに答えていいのかわかりませんが、この件で国を相手に訴訟を起こすのは難しいと思います。公立小中学校への入学を拒んだのなら自治体に処分取消と入学義務付けの訴えが可能ですが。私は国にブラジル人学校を支援し不就学児童をなくす責務があると思っています。ブラジル人学校を一条校と認めない学校教育法は憲法に違反していると思います。学校教育法の違憲を争う訴訟は可能です。もちろん最高裁による法令違憲判決というのは数えるほどしかないのですが。
訴訟というのは時間のかかる話で、今は待ったなしです。文部科学省は日本語教室の全国的設置など、ブラジル人児童の公立学校転入を支援する措置を打ち出しています。大いに期待しています。
by リス太郎 (2009-05-02 14:08) 

リス太郎

その後の動きについてまとめておきます。

3月29日、「生活保護支援ネットワーク静岡」主催の「ドドムンド浜松派遣村」が開かれ、弁護士や司法書士がブラジル人の雇用・生活相談に乗った。

3月31日、厚生労働省は失業した日系人に母国への帰国旅費として1人30万円(扶養家族には20万円)を支給すると発表。この場合、日系人の身分に基づく在留資格での再入国はできない。また、再就職を目指す日系人を対象に日本語能力など研修制度も始める。期間は原則3ヶ月。群馬県太田市や愛知県豊田市などを中心に2009年度は5千人の受講を見込む。

4月4日、群馬県高崎市の学芸館高校(通信制・私立)が2009年度から経済的に苦しい日系ブラジル人生徒の学費延納を認めることがわかった。学芸館高校はブラジル政府認可のブラジル人学校「日伯学園」(同県大泉町)と連携し、日本の高校卒業資格を取得できるコースを設置しており、延納を認めるのはこのコースに新規に登録する生徒が対象。

4月16日、政府は経済危機により厳しい生活状況にある日系ブラジル人など定住外国人の支援策を発表。小渕少子化担当相と関係省庁の幹部らがつくる「定住外国人施策推進会議」がまとめた。支援のポイントは教育対策・帰国支援・雇用対策の三本柱。

4月27日、文部科学省は日系ブラジル人児童の公立学校転入支援のため、全国約50ヶ所に日本語学校を施設することを決めた。緊急措置として3年間実施予定。2009年度補正予算案に約37億円を計上。
by リス太郎 (2009-05-02 14:50) 

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